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いまだ着地見えぬ値上げラッシュ……2023年後半戦の価格改定動向まとめ

2022年に始まった食品・サービスの値上げラッシュは、1年以上が経過した現在も継続している。奢侈品のみならず食品、ガソリンなど日常生活に欠かせない身の回りのあらゆるモノの価格が上昇し、再値上げ、再々値上げとなった商品も少なくない。
最近は「値上げ慣れ」「値上げ疲れ」といった言葉も登場するなど、「未曽有」と言われた2022年に比べて、生活者の値上げへのプレッシャーや抵抗感は減退しているように見える。しかし、ウクライナ情勢をはじめ、世界経済情勢の先行きは不透明さが一層増しており、コスト圧力に伴うメーカー各社の値上げは着地点が見えない状況となっている。本稿では、食品を中心に2023年後半の企業による値上げ動向を概観する。

Hakase_/iStock

8~9月は値上げラッシュが一旦減速?

 帝国データバンクが定期調査を行っている「食品主要195社」価格改定動向調査によると、8月31日時点における2023年の食品値上げ品目数は、既に値上げされたものや、今後予定するものを含むと、累計3万1036品目となった。この数は、2022年の年間食品値上げ品目数の2万5768品目をすでに上回っている水準となる。「バブル崩壊以降で類を見ない記録的な値上げラッシュ」と同社が述べているように、昨年に比べ、よりハイペースで食品の値上げが実施されているということになる。

 直近9月の値上げ品目数は2067品目。値上げが本格化した昨年以降、初めて2ヶ月連続で前年同月を下回ったことから、8、9月に関して対前年比では値上げが「鈍化」したと表現されている。ただし、10月には値上げ品目数が累計3万品目に到達する見込みであることから、楽観視はできない。

 断続的な値上げの背景には、電気・ガスなどのエネルギーコストの上昇、包装・資材の高騰や物流コストの増加などがある。円安水準の長期化による輸入品の価格上昇も今後続くと見込まれており、生活者への影響は計り知れない。

 カテゴリー別に値上げの動向を見ていこう。調味料は8月に続き、9月も多くの品目(1257品目)が値上がりしたものの、9月はとくに「みそ・しょうゆ」「だし関連製品」などが値上げ対象となった。6、8月と価格改定を発表した寿がきや食品は、9月にも「鍋つゆ」および「つゆ」を約6%値上げした。マルサンアイは「みそ」および「みそ加工品(即席みそ汁、調理みそ、液状みそ)」について、約7~23%と大幅な値上げを発表した。また、ヤマサ醤油では「ヤマサ醤油」の業務加工用しょうゆ、「サンジルシ醸造製品」の業務加工用しょうゆ、たまり、家庭用・業務加工用のみそを出荷価格ベースで約6~15%値上げしている。

乳製品、菓子、飲料でも値上げ続々

 食品については、日本ハムが家庭向けのハム・ベーコンなど18品目について7~20%の価格改定を発表。日清食品もラーメン・焼そば・お好み焼き・米飯・和風麺・お惣菜など幅広い商品群で。出荷価格の約5~20%の値上げを実施する。また、サトウ食品は、包装餅商品(切り餅・まる餅・鏡餅)の全商品を約10~12%値上げした。

 飼料価格の高騰やエネルギーコストの増加により、現行制度下では初の1年間で計20円の価格上昇となった乳価の価格改定が、各メーカーに大きな影響をおよぼしており、8月に引き続き、メーカー各社は値上げに踏み切っている。明治では、ヨーグルト17品の内容量を約5%減らすかたちで実質的な価格改定を行った。アサヒグループ食品も「はいはい」「ぐんぐん」「ボンラクトi」などの粉ミルクの主要ブランド商品の価格を7.4~17.6%引き上げた。

 飲料・酒類では5月に缶コーヒーなどが値上がりしたが、9月にはヤクルト本社が「New ヤクルト」「New ヤクルトカロリーハーフ」などの7品を9年10カ月ぶりに価格改定した。江崎グリコでは8月に続き9月にも幼児向け飲料各種、100%果汁野菜飲料各種を1~18%値上げした。飲料は、10月にもキリンビールやコカ・コーラボトラーズジャパンなどの大手メーカーが値上げ・再値上げを予定している。

 菓子では、ロッテが「トッポ」や「コアラのマーチ」、グミ各種などの市販用菓子66品の価格変更および1品(アーモンドチョコレートクリスプ)の内容量変更を実施した。赤城乳業では、9月にアイスクリーム17品、10月に6品を値上げする。10月にはカルビーの値上げなども予定されており、菓子類の値上げも引き続き敢行されていくとみられる。

 東京商工リサーチによると、大手外食チェ―ン122社のうち2022年1月から2023年4月上旬までに値上げを実施・公表したのは86社(構成比70.4%)と7割を超えている。また、このうち約4割の企業が複数回の値上げを実施している。

 2023年後半では、マクドナルドの都心部184店舗(全国約3000店舗の約6%)における「都心型価格」の実施(7月19日より)のインパクトが大きく、大手チェーンにおいてもなお、コスト吸収は難しいという現実が垣間見えた。

 今後の動向を見ると、年内においても10月に4533品目の値上げが確定しており、さらに品目数は増加するだろう。値上げの波は止んでおらず、値段据え置きに「お得感」を感じる状況でもある。世界経済情勢も不透明さを増しており、各種コストの高騰とそれに伴う値上げは2024年も続く見通しだ。メーカー各社や小売各社へのコスト対応力が求められている。