「魚離れ」は本当か? 日本の水産流通が直面する課題とは

2023/02/27 05:55
棚橋 慶次
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課題山積の水産流通

 水産庁の調査結果によると、日本における水産物の流通量は一貫してダウントレンドにある。魚の流通量は1889年に874万トンだったのが2020年には584万トンにまで激減した。市場経由率もかつては4分の3以上あったが現在は2分の1を割り、市場機能は著しく低下している。

 一般的に「消費者が魚を敬遠するようになったので魚の消費量が落ちた」とされているが、この説は事実とは異なる。

 考えられるのは水産物の価格の問題だ。当然、魚価は魚の種類によって異なり、国内の需給動向や海外からの流入量によっても変動しやすい。ただ、平均的な魚価は上昇傾向にあり、10年前とくらべると生鮮魚介のCPI(消費者物価)は5割近く上昇している。

 問題なのは、日本だけが水産物の流通が衰退しているという点だ。世界的な漁獲量は、水産資源管理技術の向上もあって持続的に増加しており、さらに魚食文化の普及に伴い需要も伸びてきている。

 国内における漁獲資源の枯渇、世界市場における日本の“買い負け”、漁業の後継者問題、人口減少による国内市場の縮小……と水産流通が直面する課題は多い。さまざまな課題をブレークスルーし、質が高く価格も手ごろな魚を食卓に届け続けることができるのか。水産流通業界の底力が、今問われている。

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