日本生協連が2024年度決算を公表 増収増益に寄与した「CO・OP商品」の底力とは
日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)は6月13日、東京都内で記者会見を開き、2024年度決算(推計値)の概況について公表した。日本生協連は増収増益となったが、全国116の地域生協は増収減益と苦戦した。また、この日は25年度の新役員体制についても発表。代表理事会長には前副会長の新井ちとせ氏が昇任し、初の女性トップとなった。24年度決算の概況と、新井氏が語った意気込みについて記者会見を踏まえてレポートする。
CO・OP商品事業が好調

日本生協連の24年度の供給高は対前年度比1.7%増の4454億円、経常剰余金は同10億円増の55億円と増収増益で着地した。供給高はコロナ前の2019年と比べて533億円増(同14%増)と右肩上がりに伸長している。成長をけん引するのはCO・OP商品事業で、同事業の供給高は同1.7%増の3600億円。ほかのキャロット、カタログ、ギフト事業はいずれも前年割れとなった。
CO・OP商品事業の内訳を見ると、とくに高い伸びを示したのは農畜産で、同10.3%増の275億円。そのほか、菓子飲料が同2.0%増の578億円、冷凍食品が1.6%増の660億円と好調だった。一方、為替変動や原材料高の影響を受けた水産は同0.5%減の283億円、厳しい価格競争下にある家庭用品は同0.4%減の257億円で前年割れとなった。
日本生協連代表理事専務の藤井横継氏は、組合員のニーズが高い商品については「一言でいうと、コスパとタイパだ」と説明。コスパでは大容量品が支持を集めており、タイパでは各地の生協が開発しているミールキットや冷凍食品など、短時間でおかずの一品になるような即食商品が好評だとした。今後の商品開発においても、タイパ、コスパの視点で開発を強化していくという。
CO・OP商品事業の供給高は23年度に続いて伸びたものの、藤井氏は「コープ商品事業は増収増益だが、点数が伸びていないということが一番の課題だ」と危惧する。24年度の取り組みとしては、23年度に続いて仕様の見直しや量目変更で値頃感の維持を推進したほか、類似の商品の統廃合や在庫量の削減により効率化を図った。
25年度については「商品の見直しを含めて、主力の売れ筋商品を中心に手を加え、求めやすい価格にして点数を伸ばしていく。全年を超えるような実績をつくれるように、商品の統合などで仕入れを改善する取り組みを引き続き頑張っていきたい」と語った。
商品政策テーマとしては、「利用しやすい価格」「組合員の声から生まれる新しい価値商品」「主力商品の強化・進化」「CO・OP商品の低塩化計画」「一人ひとりの食事シーンに合うCO・OP商品(量・栄養バランス)」の5つを掲げる。

25年春はカップ麺「生姜香る鶏白湯」や菓子の「あまずっぱいいちごミルクサンド」、冷凍食品の「シナモンロール」などの新商品の売上が好調だった。25年秋は好調なフリーズドライのスープ商品の提案を強化するほか、人気商品の骨取り魚シリーズのラインアップを強化する。そのほか、基礎化粧品も全面リニューアルし、組合員の要望を受けて詰め替え商品も品揃えするという。
なお、日本生協連は増収増益となったが、全国116の地域生協は増収減益と苦戦した。供給高は対前年比1.6%増の3兆705億円。内訳を見ると、店舗事業は同2.5%増の9701億円、宅配事業は同1.3%増の2兆1181億円といずれも増収だったが、経常剰余金は同18.5%減の584億円で増収減益となった。
組合員から初の女性トップに
記者会見では、25年度の新役員体制についても発表された。代表理事会長には、副会長の新井ちとせ氏が新たに就任。21年からトップに就いていた土屋敏夫氏にかわり、4年ぶりのトップ交代となった。日本生協連では初の女性会長になるという。
新井氏は組合員を経て、15年に国内最大の組織である生活協同組合コープみらいの理事長と日本生協連の副会長に就任した。会見で新井氏は、職員ではなく組合員出身という自身の経歴に触れ「1組合員の私が大役を担わせていただけるのは、生協は協同組合であり、消費者組織であるからこそだと思う。今まで通り組合員、地域、そして現場に近い存在でありたい」と述べ、「組合の視点を大切に、柔軟で共感力のある組織運営をめざしていきたい」と意気込みを語った。
また、この日はCO・CP共済の新理事長も発表された。新理事長には、笹川博子氏が新たに就任。新井氏と同様に、初の女性トップとなった。