止まる円安を追い風にできるか 間もなく発表されるニトリHD決算に期待すること

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2025年3月期決算発表において同社へ期待したいこと

 ちなみに、2025年3月期の業績に推移についてみておくと、第3四半期累計実績は売上高7049億円(前年同期比+6.2%増)、経常利益1032億円(同+2.0%増)、通期会社予想は売上高9600億円(同+7.2%増)、経常利益1340億円(+1.2%増)となっています。バランスシートの構造も変わっていませんので、損益がこの通りで推移しているならば、先ほどまで見てきた同社の課題は2025年3月期通期決算においても解消されてはいないと見られます。

 従って、来る決算発表ではぜひ同社には、売上高利益率の改善と資産・資本効率の改善に関して従来よりも積極的な表明を期待したいと考えます。

具体的には、以下の諸点です。

• 中期的な増収計画(とくに内外出店計画と既存店売上高強化策)を従来よりも詳細に提示すること、これに付随して売上高利益率の改善と資産・資本効率の改善を伴ったROE再浮上の道筋を示すこと

• これまで進めてきた物流センター投資の投資効果に関する示唆

• キャピタルアロケーションプランの提示(営業キャッシュフローの見込み、投資計画、現預金の活用および負債調達のめど、配当性向など株価還元のありかたを包括的に提示すること)

• 円安が修正された場合に着実に原価率を改善できる商品・価格・在庫管理戦略、および円安再進行を念頭においた為替リスク管理高度化策

• ニトリ国内、ニトリ海外、島忠それぞれに関するKPIの開示と、各事業において目指すべき事業効率のめど

 トランプ関税は対米貿易に依存するアジアに影響が大きく、同社の進出先の消費動向に影を落とすかもしれませんが、進出を進めるには良いタイミングにもなり得ます。同社にとって海外展開のアクセルを踏み込むタイミングが近づいているとも捉えられます。

 従って、上記のような材料が揃えば「ROEの再浮上開始、続いて海外事業の本格的な業績寄与」という美しいエクイティーストーリーが実現性の高いものとして投資家に受け止められ始めると考えます。

 筆者は少し前にできた同社の居抜き店舗に出かけることが大変楽しいです。バリュー感のある家具、家具とのコーディネーションに悩む心配のないホームファッション、家電や電動家具などの新しい提案などをじっくり堪能できるからです。競合対策としてみても、訴求力のある商品が増えていると感じます。ROEの再浮上を実現しつつ、海外展開にいよいよアクセルを踏むとなれば株価も新しいステージに入ることでしょう。次の決算説明会がたいへん楽しみです。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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