アングル:決算シーズンに不安材料、さえない「試金石」の株価

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日本株は切り返してきているが、中間決算発表シーズンに向け不安もある。「試金石」とされる安川電機の株価がさえないためだ。中国景気の減速懸念を払拭できなかったとの指摘が出ており、足元の好業績だけではマーケットで評価されない可能性を示している。2020年5月、都内で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 12日 ロイター] – 日本株は切り返してきているが、中間決算発表シーズンに向け不安もある。「試金石」とされる安川電機の株価がさえないためだ。中国景気の減速懸念を払拭できなかったとの指摘が出ており、足元の好業績だけではマーケットで評価されない可能性を示している。

中国懸念、払拭できず

安川電機が8日に発表した8月連結中間決算は好調だった。売上高は前年比28.4%増の2399億円、営業利益は同102%増の268億円と大幅な増収増益。2022年2月期通期の営業利益予想も540億円から580億円に上方修正された。

第2四半期(6─8月)の連結営業利益139億2300万円に対し、「160億円の当社予想に届かなかった」(野村証券)との声も出ていたが、研究開発費の一時的な増加が要因とみられており、失望感は乏しかった。

しかし、11日のマーケットでは売りが先行。日経平均が前日比449円(1.60%)高となる中、安川電の株価は同100円(1.93%)安の5070円で取引を終了。朝方は一時235円(4.55%)安となる場面もあった。

市場の懸念は中国にある。電力不足や不動産問題の影響で景気減速が警戒されており、同社のファクトリーオートメーション(FA)などのビジネスにも影響が出る可能性があるとみられている。

8日に会見した安川電の小笠原浩社長は、中国の電力不足問題に関して、現地情報も踏まえた私見として「二酸化炭素の排出力が非常に多い産業、あまり先が見込めない産業向けの電力を制御しているようだ」と解説。もともと電力供給が不安定だった経緯もあり、中国の生産現場で混乱は生じていないと説明した。

ただ、市場では懸念を払拭するには不十分と受け止められた。いちよし証券の投資情報部の及川敬司氏は「市場の関心は中国の景気減速、電力供給懸念に向いている。懸念を払拭する明確な説明がないと、売られてしまう」と分析する。

供給不足を警戒

日本企業全体でみると、7─9月期決算は、4─6月期に比べ、収益の前年比伸長率がやや減速するとみられている。前年に落ち込んだ反動で伸びが大きくなる「ベース効果」が一巡するほか、新型コロナの影響で東南アジアの生産拠点が閉鎖された影響などによる供給不足の問題が顕在化しているためだ。

米スポーツ用品大手ナイキは9月23日、新型コロナによるベトナム工場閉鎖の影響で、2022会計年度(21年6月からの1年間)の売上高見通しを引き下げた。ベトナムでは10週間分の生産が失われ、完全な生産体制に戻るには数カ月を要する見通しという。

「東南アジアの供給制約は消費財だけでなく、自動車など耐久財への影響も小さくない。いずれ解消されていくとみられるが、足元の業績には想定外の下振れが出る可能性がある」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ投資ストラテジスト、藤戸則弘氏は指摘する。

値がさ株が多く、日経平均のけん引役であるハイテク株にも半導体不足の問題がのしかかっており、日経平均をTOPIXで割ったNT倍率は11日時点で昨年10月以来の水準に低下している。

「決算の良し悪しに関係なく、ハイテク株の一角では利食い売りに対する警戒感がある」と、岩井コスモ証券の投資情報センター長、林卓郎氏は指摘する。

11日の東京株式市場では、海運や空運など経済再開(リオープン)への期待が高い業種が買われた。「9月決算ではハイテクや自動車などとの株価反応のギャップが目立つ可能性がある」(藤戸氏)とみられている。

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