ウォルマート 楽天が西友に出資した壮大な理由と新体制化で西友が向かう先は!?
小売世界最大手のウォルマート(Walmart)が傘下の西友(東京都/リオネル・デスクリー社長)株売却に向けて動き出した。売却するのは西友株の85%で、うち65%を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(Kohlberg KravisRoberts:以下、KKR)が、20%を楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)が取得する。この新たな体制下で、西友はどのような道を辿るのか。楽天のねらいは何か。
「日本はもはや魅力的な市場ではない」
ウォルマートは11月16日、プレスリリースを更新し、完全子会社の西友の株式を売却することを明らかにした。売却するのは西友株の85%で、そのうちKKRが65%、楽天が設立予定の新会社・楽天DXソリューションが20%を取得、ウォルマートが15%を継続保有する。売却額は非公表だが、西友の企業価値を1725億円と見積もり、株式売却をすすめるとしている。

ウォルマートが西友と資本業務提携を発表したのは2002年のこと。その後、ウォルマートが段階的に西友株を取得し、08年に完全子会社化。以来、ウォルマート流のEDLP(エブリデイ・ロープライス)をはじめウォルマート流の運営手法を根付かせるべく、試行錯誤を繰り返してきたが、西友の業績は上向かずにいた。

ウォルマートによる西友株売却は18年頃にも噂されていた。イオン(千葉県/吉田昭夫社長)をはじめ大手小売が買い手候補として名前が挙がり、旧ドン・キホーテホールディングス(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス:PPIH)の当時の経営トップが西友買収に関心を示したのも業界内では知られた話だ。しかし結局、買収は実現せず、19年6月に西友CEOのリオネル・デスクリー氏が「西友の再上場をめざす」とし、新事業計画を発表。自力での再生を模索するかと思われていた。
そうした中での今回の発表である。ここにきての西友株売却は何を意味するのだろうか。
ウォルマートは18年にブラジル事業の過半数の株式を米投資ファンドに売却しており、20年10月には英子会社のアズダ(ASDA)の株式過半数を売却すると発表。11月には、アルゼンチン事業も売却に向けて動いていると報じられている。
米国流通に詳しい三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は、「ウォルマートがグローバル戦略で、中国とインド、そしてECに経営資源を集中させているのは明らかであり、その方針は以前から変わっていない。海外事業はコストがかさむので黒字化が難しい。成長している市場でどれだけ自社の事業を伸ばしていくかというのがウォルマートの戦略だ」と話す。
元・西友副社長で、現在は一般社団法人中部SDGs推進センターの代表理事を務める戸成司朗氏は、「深刻に受け止めないといけないのは、日本市場の魅力の低下。西友株の売却は、ウォルマートが日本市場に成長可能性がないと判断したともいえる」と指摘する。ウォルマートは西友株の15%を継続保有するとしているが、事実上の日本市場からの撤退であるというのだ。
約7000億円を稼ぐ店舗網をどう再生する?
ウォルマートの“撤退”により、西友再生のバトンはKKRと楽天に渡ることになる。
投資ファンドのKKRはIPO(新規上場)、あるいは企業価値が向上したタイミングで西友株を売却するのは確実であり、西友再生においては第2位株主となる楽天の動きが注視される。楽天とウォルマートは18年に戦略的提携を結んでおり、国内では「楽天西友ネットスーパー」を運営、米国では電子書籍サービス「楽天Kobo」を提供するなど、以前から協業関係にある。今後は国内に約300店舗ある西友の店舗をどのように再生するがが焦点だ。
西友の売上高は
DCS Report の新着記事
-
2025/04/18
関西初の直営カフェ併設店「ビオラルうめきた店」の売場づくりとは -
2025/04/18
ヨークHD再成長の命を握る?「ヨークパーク」の全貌とは -
2025/04/02
「#ワークマン女子」から「Workman Colors」へ 売場・商品はどう変わった? -
2025/04/02
早くも3店舗体制に! ロピアの“青森戦略”の成否を現地で考察してみた -
2025/03/17
ローカル小売とメディアが連携!「九州リテールメディア連合会」の深謀 -
2025/03/15
欧米小売に学ぶ「包括的な売場づくり」の意義と手法とは
この連載の一覧はこちら [279記事]

ウォルマート,西友,楽天グループ・楽天ペイの記事ランキング
- 2025-04-12トライアル西友、セブン&アイ、イオンの行方は? 気鋭のアナリストが解説
- 2025-03-25トライアル、西友買収の“真相”と“深層” トップが激白した今後の展望とは
- 2025-03-06トライアル、西友買収の衝撃! 会見で示された「6つの目的」とは
- 2025-03-10【独占インタビュー】トライアルHD亀田社長が展望する「西友買収後」の景色とは
- 2025-03-10西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは
- 2025-04-14ネットスーパー相関図 2025 市場拡大背景に協業・提携が活発化!
- 2025-03-05西友買収に名乗り出た3社をトップアナリスト、市場関係者が徹底評価!勝者は誰?_再掲
- 2022-09-28ファッションECで圧倒的な存在感!楽天ファッションが影響力を高めた理由とは
- 2025-02-28ウォルマートがNRFとCESに出展と登壇する深い理由とその戦略とは何か?
- 2011-10-14店舗数、M&A、総菜、ネットスーパー。いよいよ拡大路線に=西友兼ウォルマートジャパンCEO
関連記事ランキング
- 2025-04-08巨大再編が続々! 「流通地殻変動」の全貌と未来とは
- 2025-04-02静岡県初出店! コストコ隣の「ロピア浜松プラザフレスポ店」の売場をレポート
- 2025-03-31バローHD「D・S戦略」の集大成! 注目旗艦店「多治見店」の売場を解剖
- 2025-03-24秋田県4年ぶりの新店「イオンスタイル山王」に見る、イオン東北の”地域密着型MD”の最前線
- 2025-04-10食品スーパー相関図2025 トライアル、ヨークHD、ロピア……激変必至の市場を展望!
- 2025-04-07意外に高価格帯も目立つ?「ロピア浜松プラザフレスポ店」の売場を解説
- 2025-04-12トライアル西友、セブン&アイ、イオンの行方は? 気鋭のアナリストが解説
- 2025-03-25トライアル、西友買収の“真相”と“深層” トップが激白した今後の展望とは
- 2025-04-09平和堂2024年度決算、連結は増収増益も単体では減益着地 カギを握る「3つの重要戦略」
- 2025-03-26売上高1兆円超え!イオンのPB「トップバリュ」はなぜ快進撃を続けるのか
関連キーワードの記事を探す
リニューアルで売場拡大&アイテムも拡充!「いなげや川崎中野島店」の総菜をレポート!
食品スーパー相関図2025 トライアル、ヨークHD、ロピア……激変必至の市場を展望!
アルディが米国の店舗網をさらに拡充! カルフールは駅ナカ出店強化へ
ウォルマートがNRFとCESに出展と登壇する深い理由とその戦略とは何か?
大手の戦略に変化? NRF2025で語られた海外小売のサステナビリティ戦略
ウォルマート物流ロボット事業売却、アルディ初発表のプライス・リーダーシップ・レポートとは
関西初の直営カフェ併設店「ビオラルうめきた店」の売場づくりとは
早くも3店舗体制に! ロピアの“青森戦略”の成否を現地で考察してみた