オイシックス・ラ・大地(東京都/高島宏平社長:以下オイシックス)は11月12日、2021年度3月期第2四半期決算説明会を行った。新型コロナウイルス(コロナ)による巣ごもり、宅配需要の増加によって、高い伸び率での増収増益となった。
営業利益441%、コロナによる追い風で躍進
オイシックスの21年3月期第2四半期連結決算は、売上高475億6000万円(対前年同期比146%)、営業利益39億7000万円(同441%)、純利益24億5000万円(同628%)で、大幅な増収増益となった。第1四半期に引き続き、コロナによる宅配需要増加の恩恵を受けたかたちだ。売上高増加分(対前年同期)約150億円の内訳は、ARPU(会員一人あたりの平均売上高)増加の影響分が約66億円、会員数増加の影響分が約35億円、そのほかの事業での売上増加が約49億円となっている。
事業別では、オイシックスが売上高230億4000万円(同140%)、大地を守る会が70億9000万円(同138%)、らでぃっしゅぼーやが90億8000万円(同122%)となった。オイシックスは、1Qに出荷キャパシティが逼迫し新規会員獲得を中止していたが、2Qでは再開、会員数は主要3事業あわせて約2万人増加した。平均ARPUは3事業いずれも同120%前後で、これはコロナによる全体的な需要増に加え、例年8月に低下するARPUが、帰省や旅行の自粛によって減少幅が抑えられたことによるとみられる。海外事業では、19年4月に子会社化したアメリカのビーガン向けミールキットブランド「パープルキャロット(Purple Carrot)」が、初めて黒字化した1Qに引き続いて約41億円の増収となった。
上期は変化するニーズへの対応と出荷体制の改善に注力
上期はコロナによって変化するニーズに応えるため、さまざまな新施策を実施した。オイシックスでは、自宅での食事機会増加に伴ってミールキットの販売数が前年同期の830万食から1167万食に大きく伸長した。ミールキットのラインアップの増強のため、「モスバーガー」や「大戸屋」などの外食チェーンとコラボレーション。モスバーガーのミートソースを使った「ボロネーゼ」、大戸屋の人気メニューの1つ「鶏と野菜の黒酢あん」のキットはどちらも即日完売する人気を見せた。また、営業自粛を余儀なくされた外食チェーンの料理を、簡単な調理で店の味が再現できるキットにして自宅へ届ける「おうちレストラン」を開始、顧客・外食チェーン双方から好感触を得た。23店舗43アイテムを取り扱い、なかでも人気もつ鍋店「やまや」のもつ鍋キットは累計で4000セットを販売した。
また、1Qで課題となっていた出荷キャパシティの改善にも取り組んだ。もともと、オイシックスブランドの商品については、神奈川県海老名市にある配送拠点ですべての出荷を行っていたが、コロナの影響によってキャパシティが超過。4月以降急遽、神奈川県藤沢市、座間市、埼玉県狭山市にも拠点を増設し、現時点の出荷キャパシティは前期末比で50%増となった。来年の10月を目途に海老名の配送拠点を刷新し、以降再び海老名に出荷を集約していく方針だ。
下期の戦略は子供向けミールキット開始、とくし丸も拡大目指す
下期から新しく始動するプロジェクトには、ウォルト・ディズニー社とのライセンス契約による「Table for Tomorrow」プロジェクトがある。ディズニーの持つ、子どもとその親への圧倒的な訴求力とオイシックスの安全性の高い食材を組み合わせ、子ども向けミールキットなどを販売する。第1弾として、ディズニーの人気キャラクターであるミッキーとミニーをかたどった豆腐チキンバーグに、野菜を使ったソースを合わせた「ミッキー&ミニー 野菜たっぷりハンバーグ」のミールキットを11月12日から販売する。「食育、偏食の問題など、子どもたちの食にまつわる問題を無理なく解決したい」と高島宏平社長は話した。
また、子会社が運営している移動スーパー「とくし丸」事業も拡大をめざす。コロナによって移動販売のニーズが拡大し、流通総額は対前年比155.0%となったが、「(とくし丸事業は)黒字だが、もともと大きな収益を生んでいるわけではない。80~90代のいわゆる買物難民と呼ばれる方々のインフラとなることが重要」と高島社長。現在614台が稼働しているが、今後2~3年で1000台をめざす。
上期の好業績を受け、オイシックスは通期業績予想を上方修正した。売上高を当初予想の780億円から900億円へ、営業利益予想を30億円から50億円へ引き上げた。下期、コロナによる追い風は弱まる予想だが、上期新たに獲得した会員分の売上が継続的に上積みされることから上方修正に踏み切った。通期での進捗率はすでに、売上高が53%、営業利益が80%となっている。
「オイシックスのミールキットは、我々が思うほどまだ知られていない。これからも顧客ニーズに耳を傾け、それに応えることに一生懸命取り組んでいきたい」と高島社長は語った。