滑り出し好調な新生イオン北海道、今後の重点施策は「SPA化」による食の充実

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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食のSPA化など重点施策に積極的に取り組む

 イオン北海道が上期、重点的に行った施策のひとつに食のSPA化がある。経営統合によるスケールメリットとシナジーを生かし、おいしく安全で・安心な商品を充実させる“強い食”をめざして、商品本部内に食品商品開発部を新設、生鮮4部門とデイリーの5カテゴリーを対象に、上期中に約400品目の商品開発を行った。産地開発では、「今朝採れ野菜」としてその日の朝に収穫したばかりのとうもろこしやレタスなどを販売。商品開発では、北海道民の好みに合わせた甘めの味付けのポテトサラダを、地元食材を使って製造するなどした。新規開発商品の売上は好調で、初年度計画目標である40億円に対し、上期売上は20億円と目標達成が見込めるペースで推移している。3年後には150億円規模をめざして商品開発に注力する方針だが、特に農産において、コロナの影響によって北海道外での産地開拓が思うように進められていないなどの課題にも直面している。
 新規出店と既存店舗の活性化にも力を入れた。重点エリアとしている旭川市・苫小牧市にそれぞれ「ザ・ビッグアモール店」、「マックスバリュ日新店」を新規出店したほか、札幌市内に「まいばすけっと」を2店舗オープン、上期の新規出店は計4店舗となった。既存店舗の活性化では、「マックスバリュ北店」(札幌市)で総菜コーナーの拡大やベーカリーコーナーの新設を実施。「ザ・ビッグ東雁来店」(同)では、コロナの影響を受けて需要の伸びた冷凍食品のラインアップ拡充と、商品を手に取りやすいリーチインケースへの変更を行った。これらの活性化を行った店舗の売上は前年超えで推移している。一方、下期は大型の活性化予定はしておらず、上期で行った活性化の効果と、コロナの感染状況を慎重に追いながら、来年の活性化の方向性を見極める時期とする方針だ。
上期は実店舗の活性化と並行して、インターネット販売事業についても強化した。コロナによる宅配需要の増加に伴い、ネットスーパーの売上高は対前年同期比134.6%、贈答品や家電、おせちなどの季節の品を取り扱うeショップでは同321.0%となった。殺到した注文に対応するため、オペレーションやシステムの効率化を実施。また、配達リソースを確保するため、それまでイオン系列の店舗でのみ行っていた店舗受け取りサービスの対象店舗を、マックスバリュ店舗にも拡大した。インターネット販売の需要増は今後も続くとみられているが、顧客との接点をどこで持つかという課題もある。下期には「イオンお買い物アプリ」を有効活用するなどし、直接店舗へ足を運ばない顧客にも積極的にアプローチしていく。

経営統合から半年、出だしはスムーズ

 イオン北海道は、3月1日に旧マックスバリュ北海道と経営統合し新生イオン北海道となったが、合併後半年の総評を青栁社長は「(合併に向けて)かなり準備をしてきたので、スムーズなスタートだったと思う」と話した。当初、総合スーパー(GMS)であるイオン北海道と、スーパーマーケットである旧マックスバリュ北海道は、その業態特性の違いから十分なシナジーを出すのが難しいのではないかという声もあった。しかし実際には、トータルの店舗数が増え商品部が統合されたことで、店舗ごとの在庫の偏りを調節しやすくなり、欠品や突発的な需要にも対応できるようになったという。また、販売実績データを参照する仕組みは、旧マックスバリュ北海道が使用していたものがシンプルで使いやすく、単品の販売動向がすぐにわかるなどの利点があったため、新生イオン北海道全体で導入した。今後も経営統合のもたらすシナジーを最大限活かし、さらなる収益拡大をめざす。

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