米8月雇用137万人増、政府支援の効果薄れ伸び鈍化 失業率8.4%

ロイター
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米カリフォルニア州の改装中の店舗
4日、米労働省が発表した8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比137万1000人増となり、伸びは前月の173万4000人から鈍化したほか、予想の140万人も下回った。写真はカリフォルニア州で7月30日撮影(2020年 ロイター/Mike Blake)

[ワシントン 4日 ロイター] – 米労働省が4日に発表した8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比137万1000人増となり、伸びは前月の173万4000人から鈍化したほか、予想の140万人も下回った。政府支援策の効果が薄れる中、新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた景気後退(リセッション)からの回復が危ぶまれている。

雇用者数には国勢調査のため臨時採用された人が含まれ、全体の伸びの約5分の1を占めた。

失業率は8.4%と、7月の10.2%から改善。予想は9.8%だった。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の分類が失業率データのゆがみにつながっており、こうしたゆがみを除くと、失業率は9.1%だったとみられる。8月中旬時点で、何らかの失業手当を受けていた人は少なくとも2920万人。

オックスフォード・エコノミクスのシニア米エコノミスト、リディア・ブスール氏は「労働市場はいら立たしいほど緩慢なペースでの第2段階の回復局面を迎えた」とし、「レイオフされた従業員の2人に1人が依然失業状態で、議会は必要とされる追加支援策を打ち出せずにいる。緩慢かつより不安定な雇用の伸びは経済に著しいリスクをもたらす」と述べた。

企業に対する政府の給与支援プログラムは失効もしくは終了の瀬戸際にある。失業給付を週600ドル加算する特例措置は7月末に期限切れとなった。新型コロナの感染拡大に伴い経済活動は3月中旬以降、ほぼ停止状態に陥っていたが、政府や連邦準備理事会(FRB)による大規模な経済対策が下支えとなり、持ち直しに転じた。

11月の米大統領選が迫る中、再選を目指すトランプ大統領はツイッターへの投稿で「雇用統計の内容は素晴らしい!」と称賛し、雇用増の継続は米経済がコロナ禍の打撃から立ち直りつつある兆候と強調した。

雇用者数は6月時点で478万1000人増加。その後は鈍化傾向が続いている。コロナ禍前の2月時点と比較すると、なお1150万人もの雇用が失われているほか、失業率は4.9%ポイント悪化している。

ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「雇用の回復は経済再開直後に勢いを増した後、失速している」と指摘。PNCフィナンシャルのチーフエコノミスト、ガス・フォーシャー氏も「雇用市場の回復へのリスクは下向きだ」と述べた。

一時帰休や解雇の動き拡大

これまでの雇用の伸びは一時帰休からの復帰が大半を占める。コロナ感染は夏場にかけて急増し、その後は安定化の兆しも見られるが、なお多くのホットスポット(一大感染地)で感染が継続している。

ユナイテッド航空は2日、コロナ禍による航空業界への打撃が続く中、10月1日に従業員1万6370人の一時帰休を計画していると発表。自動車大手フォード・モーターも2日、年末までに米国で1400人のホワイトカラー職の削減を目指すと明らかにした。

FRBは2日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、経済活動は8月下旬にかけて小幅ながら拡大し、雇用はおおむね増加したものの、成長は一部地域で引き続き停滞したとの認識を示した。また一部の地区では、特にサービス業で雇用の伸びが鈍化し、変動が大きくなっているほか、需要が引き続き軟調なため、一時帰休の労働者が恒久的に解雇されるケースが増えていると指摘した。

4─6月期の米国内総生産(GDP)は31.7%減と記録的な落ち込みを記録した。7─9月期のGDPは30%程度持ち直す可能性もあるが、雇用の減速は個人消費を直撃する形で10─12月期のGDPに影響を及ぼすとみられる。

時間当たり平均賃金は前月比0.4%増と、前月の0.1%増から伸びが拡大した。予想は横ばいだった。平均週間労働時間は0.1時間伸び34.6時間。ただ労働統計局(BLS)は、賃金や労働時間の伸びをあまり深読みしないよう注意を促した。コロナ禍による雇用の喪失は低賃金のサービス業に集中している。

労働参加率は61.7%と前月の61.4%から上昇。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は14.2%で、前月の16.5%から低下した。

民間部門の雇用者数は102万7000人増加。内訳では、小売が24万9000人増。専門職・企業サービスは19万7000人増。伸びの半分以上は人材派遣が占めた。娯楽・宿泊は17万4000人増と、前月の62万1000人増から鈍化。製造業は2万9000人増。建設は1万6000人増。運輸・倉庫は7万8000人増。政府関連は34万4000人増。このうち23万8000人が臨時採用だった。

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