メニュー

コロナウイルス感染拡大で活況、中国のテクノロジーを駆使した安全な“巣ごもり” 経済

世界各国で感染が拡大している新型コロナウイルス。感染拡大の最中さまざまな難題に向き合い、そして「終息後」を見据え始めた中国の小売業界の「今」についてお届けする。自主隔離により自宅で過ごす人が多い中、その暮らしぶりは我々日本人が思う以上に快適な生活を送っている実態も明らかになった。

istock.com/allensima

 中国では、新型コロナウイルスの感染が拡大し多くの人が自主隔離を促された結果、 「“巣ごもり”経済」が活発化している。中国における新型コロナウイルスの感染拡大に関するニールセンの最新調査では、この「巣ごもり経済」とその新たな消費傾向が明らかになった。

 ニールセン中国社長、ジャスティン・サージェントは「中国政府は、ウイルスを効果的に封じ込める一連の包括的な対策により、流行に迅速に対応しました。政府のこのタイムリーな対応により、人々の危機克服への自信は大いに高まりました。自主隔離により外出が制限されましたが、この結果、新たなライフスタイルが生まれ 「巣ごもり経済」を後押ししたと言えます。オンラインショッピング、オンライン教育、在宅勤務は急速に拡大・発展しています。消費者は、安全に暮らしながら買い物や娯楽など日々のニーズを満たすべく状況にすばやく適応しています」とコメントしている。

安定供給が信頼感に貢献

 中国国内でウイルスは徐々に封じ込められており、消費者の信頼感は向上し続けている。ニールセンの調査では、調査対象となった中国の消費者の92%は、中国がこの状況に打ち克つだろうと自信を示している。この信頼感は、中国政府の適切な予防管理対策、タイムリーで透明性のある情報開示の結果であると言えるだろう。消費者の82%が、感染拡大時における情報開示の透明性を認めている。

 衛生関連アイテムの十分かつ安定した供給が不可欠であることは言うまでもあない。同時に、消費者が自宅にいながら生活を楽しめるという状況が、感染拡大制御への信頼感を確かなものにしたことも特筆すべき点だ。感染拡大の最中、効率的でスピーディーなオンラインショッピングが消費者の日常的なニーズを満たし、多様化したオンラインエンターテインメントやその他のアプリケーションは娯楽やレジャーとして機能し続けている。さらに、家族、友人、ペットと過ごす時間が増えることに対しても大部分の人が好意的だ。

 ニールセンの調査によると、インターネット、ビッグデータ、メディアコンバージェンスなど最先端テクノロジーが、感染拡大に際し最新情報の迅速な伝達に貢献したことが分かっている。治療と隔離措置は継続的に実施され、リスクはリアルタイムでモニターされ、無人偵察機や遠隔医療といった最新技術もウイルス対策に貢献した。

 人々は自主隔離により自宅外での活動を制限されたが、 O2O(オンライントゥオフライン)生鮮食品販売プラットフォームなど人的接触のない配送サービスが日常生活の維持に役立ったことも分かっている。こうしたサービスやオンラインショッピングは、消費者の生活を便利にするのみならず、感染予防にも貢献したと言えるだろう。

テクノロジーを駆使した安全な「巣ごもり経済」の拡大

 感染拡大の最中、消費者のレジャーや娯楽、家庭生活、在宅勤務、就学に関する懸念や議論が急速に高まった。自主隔離により自宅で過ごす人が急増したものの、中国の消費者の大多数は前向きな姿勢を保ち、自宅での多彩な生活を歓迎している。多くの消費者は、健康を保ちテクノロジーを活用しながら、オンラインで買い物をし、自宅で仕事や勉強をしている。

 ニールセンの調査によると、感染拡大に際し日用品や生鮮食品への需要が高まったことが分かっている。 70%近くの回答者のが日用品・生鮮食品を週2回以上購入したとし、このうち80%以上が オンラインで買い物をしたとした。自主隔離により、消費者のオンラインショッピングの習慣は拡大し、89%の回答者は、感染拡大終息後、これまでよりも積極的に日用品や生鮮食品をオンラインで購入したいと回答している。

 感染拡大の影響を受けて中国では、学校と企業活動の再開が延期され、この結果「オンライン教室」や「クラウドオフィス」が広まった。ニールセンの調査によると、感染拡大時には94.1%の回答者が在宅勤務に対して前向きもしくは中立的な態度を示し、83%の回答者は在宅勤務はオフィスでの勤務と同じくらい効率的だとした。自宅で過ごす間も人々の向上心が消えることはなく、オンライン教育の需要が急増している。調査では、消費者の93%がオンラインコースを受講することに対して前向きもしくは中立的な態度を示しており、日常生活における「幸せな時間」と見なしている。55%が読書を自宅での娯楽と考え、81%はオンラインコースを受講して日々の暮らしに活力を得ている。

 自主隔離期間中、消費者は健康・衛生に対する高い関心を示した。ニールセンの調査によると、調査対象者の80%は感染拡大が終息した後も健康的な食事に注意を払うと回答している。また、75%は将来、スポーツやフィットネスにさらに時間を費やすと答え、60%は定期健康診断への支出を増やすとしている。さらに59%が保険に追加加入すると回答している。

「スマートヘルス」製品の購入も増加した。 回答者のそれぞれ90%、93%、77%が、空気清浄機、浄水器、スマートウォッチ(ブレスレット)をすでに購入しているか、購入予定であるとしている。消費者はより多くのテクノロジーが組み込まれたフィットネス製品を好むようになっている。感染拡大中、注目を集めた新アイテムのひとつに「フィットネス トラッキング リング」がある。価格は600元(約9,500円)から2,000元(約31,500円)に上昇したものの、ほとんどが売り切れた。

 サージェントは「中国では、ここのところフィットネスに対する意識が高まっていたが、新型コロナウイルス感染拡大による意識の高まりは、これまでのトレンドとは異なる。消費者の健康に対する理解はこれまでになく多面的になり、身の安全のための衛生管理や健康的な食事といった伝統的な領域を超えて、テクノロジーを駆使した『スマートヘルス』を追い求めるようになっている。現在のこの状況は、健康の概念をアップデートし、テクノロジーと連動した健康やフィットネスの認識を急速に拡大し、従来の境界線を壊しながらテクノロジーと新しいライフスタイルとを結びつけている。瞬時に出現したこのヘルストレンドに注力するメーカーや小売企業は、消費者の需要増加に巧みに対応していくだろう。衛生的で安全性の高い製品コンセプトとテクノロジーを活用したヘルスマネジメントサービスは、消費者とブランドの結びつきを強めるはずです」としている。

 ニールセンの調査では、感染拡大の期間中、人的接触のない宅配サービス、遠隔医療、インテリジェントロボットなど「非接触型」のサービス が中国の消費者の関心を集めていたことが分かっている。 「巣ごもり経済」では、テクノロジーが積極的に採用される。回答者の93%は5G携帯電話を購入する予定があるとし、67%は将来の仮想ショッピングでVR/ARデバイスを利用できるだろうとしている。 ニールセンの調査では、女性が男性よりもスマート製品やテクノロジー製品に関心を持っていることも明らかになっている。一般的に男性と比較して女性は、スマートスピーカーやホームシアターなどのホームアクセサリーからスマートカーといった高額商品まで、インテリジェント製品を購入する意欲が高いことも調査から分かっている。

「巣ごもり経済」によってもたらされるビジネスチャンスを掴む

 新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活と消費習慣に大きな影響を及ぼしているが、「巣ごもり経済」の台頭はビジネスオーナーに多くのインスピレーションを与えている。オンラインチャネルの促進、O2Oサービスのさらなる改善、オムニチャネル統合の加速は、今後の中国市場における全体的な傾向になるだろう。

 生鮮食品のオンラインショッピング、クラウドオフィス、オンライン教育などのオンラインサービスの人気は急速に高まっている。感染拡大の期間、これらのビジネスを展開する企業は、既存顧客を維持しながら優位性を活かしてアップグレードを加速し、新規顧客を獲得する取り組みを強化する必要がある。

 メーカーは、スマートデバイスと健康製品の需要拡大に目を向ける必要があるだろう。また、メーカーおよび小売企業は、新しい消費傾向を的確に捉え、購買力を特定して最大限引き出し、テクノロジーや健康に関する新製品やサービスを立ち上げブランドのアップグレードを図ることができるか問われていると言える。

 サージェントは「新型コロナウイルスの感染拡大は、中国の消費者の健康に対する意識を急速に塗り替えており、購買行動や利用チャネルは大きな変化を遂げています。こうした変化は、メーカーと小売業者にとって課題であり、またチャンスでもあります。 5G、AR、AI、そして急速に変化する市場環境により、メーカーは新しいビジネス戦略を模索しながら、同時に急速な変化を受け入れ続ける必要があるでしょう」と述べている。

 


 

ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
お問い合わせ:JPNwebmaster@nielsen.com