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展望2020:増税できない日本、「赤字漬けの民主主義」に=慶大・麻生教授

展望2020イメージ
12月19日、慶應義塾大学法学部の麻生良文教授は、ロイターのインタビューに応じ、公平な課税に向けて課税ベースを「所得」から「消費」に転換するのが望ましいと述べた。写真は日本円紙幣。東京で2010年8月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 19日 ロイター] – 慶應義塾大学法学部の麻生良文教授は、ロイターのインタビューに応じ、公平な課税に向けて課税ベースを「所得」から「消費」に転換するのが望ましいと述べた。直接税方式にすれば、累進的な消費課税が可能だとした。ただ、政界でさらなる消費増税への反対論が強い中、選挙で選挙民が負担と受益のあり方を選び、財政支出の拡大に歯止めをかける機能が働かなくなっていると指摘。日本は、1960年代に米国の経済学者ブキャナンが唱えた「赤字漬けの民主主義」に陥っていると語った

消費税の望ましいあり方

麻生教授は17日に実施したインタビューで「公平な課税のために消費を課税ベースとするか、所得を課税ベースとするかという論争が昔からあるが、消費を課税ベースとすると比例税なので逆進的ではない」と指摘した。消費の方が納税者の経済力をよく反映していることもあり、「経済学者の多くは消費を課税ベースとすべきだと考えている」と話した。現状、消費税は間接税だが「直接税タイプの消費課税も実行できる。これなら累進的な消費課税も可能だ」と述べた。

麻生教授はまた、10月の消費税率引き上げでは消費税の逆進性と、駆け込み需要と消費反動減への対策だけが問題にされたと指摘。「消費税の本当の効果を把握しないで『小さい欠陥』に話が全部行ってしまっている」と話した。

その上で「(増税への)反対論が異常に政治的に大きな力を持ってしまったので、増税できない」と指摘。民主主義的な意識決定プロセスでは、選挙民が負担と利益の両方を勘案して政治家を選ぶことで間接的な統制が働くが「財政赤字がどんどん拡大しても(政治的に)増税がだめだとなると、負担感なしに今回の経済対策のように支出だけが膨らんでしまって、負担があるから支出を抑えようという選挙を通じた歯止めが利かなくなっている」と懸念を示した。

経済対策

財政支出が13.2兆円に上る政府の経済対策について、麻生教授は「財政支出を拡大すると短期的に需要が拡大して景気が良くなるというのは旧来的なケインズ経済学の考え方だ」と述べた。経済対策には各省庁が要求してきた事業がごちゃまぜに盛り込まれているとし、「社会資本整備は、景気対策というよりもコストとベネフィットを考えて民間にできないものを政府がやるべきだ」と指摘した。

麻生教授は「今は低金利が続いているが、10年後どうなっているかは分からない」として、政府債務が膨らむ中での国債金利の急上昇リスクに警戒感を示した。低金利を活用した財政投融資の拡大は「かなり無責任な話だ」と述べた。

*麻生氏は1984年に慶大法学部卒、89年に一橋大学大学院経済学研究科博士課程を単位取得済み退学。慶大法学部助教授を経て2004年に同教授。06年から08年まで、財務省・財務総合政策研究所の総括主任研究官を務めた。