[東京 6日 ロイター] – 12月のロイター企業調査によると、来年の五輪後に景気が縮小局面に転じるとの回答が全体65%を占め、新たな経済対策を要望する声が過半数となった。景気下支えに加えて、災害復旧、成長分野への投資を望む声が目立つ。ただこれ以上の歳出増は財政再建を阻み、バラマキや金融緩和が弊害を生む懸念も強く、追加対策には3分の1が反対している。
政府が外為法改正で海外からの日本企業への出資を厳格化したことについて、安全保障上必要との回答が62%を占め、技術漏洩などを防止するとして評価されている。ただ4割弱は厳しすぎる、ないしは強化不要と回答し、日本株の魅力が低下することや海外との提携が疎外されることなどの問題点を指摘している。
調査は11月20日から12月2日までの期間に実施、250社前後から回答を得た。
来年の景気について、五輪前まで「拡大局面」との見方が37%を占めている。「現状維持」との見方は57%と過半数を占め、落ち込みはさほど予想されていない。
一方、五輪後は「縮小局面」に転じるとの予測が65%に上った。「過去の五輪開催地で大会後の景気が縮む傾向は周知の事実」(サービス)、「急激に消費が落ち込む」(輸送用機器)などと不安の声が上がっている。
対策として公共工事を求める声が30%と最も多くなった。「災害対策インフラ計画に注力すべき」(電機)との声が目立つ。所得税減税も23%を占め、設備投資減税も21%となった。
IT・人工知能(AI)などの人材投資は17%でそれほど多くなかった。「中長期的な視点から」(電機)、「情報産業の投資を続けないと、米国や中国にのみ込まれる」(食品)といった指摘がある。
もっとも3割の企業はほぼ横ばいで推移するとみており、「都内再開発が進んでいることやインバウンド増加が景気を下支える」(サービス)、「特需には必ず反動はある。対応していはカンフル剤を打ち続けることになってしまう」(輸送用機器)、「国土強靭化予算がすでに対策となっている」(機械)など、これ以上の対策は不要との声も数多く寄せられた。
<出資規制厳格化、4割が事業疎外要因に>
11月に成立した改正外為法で、安保上重要な企業への出資規制の厳格化が決まったが、企業からは「安保上必要な措置であり妥当」との回答が62%を占め、理解を示す企業が過半数となった。「技術や経営ノウハウの海外流出が防止できる」として評価する声が38%を占めた。
「中国資本から国内企業買収を制限することは必要」(紙・パルプ)、「土地の規制についても規制が必要」(ゴム)などの指摘がある。また「軍の基地周辺や原発など重要防護施設周辺の土地などを含め、国による許可制とすべき」(卸売)との厳しい指摘も寄せられた。
他方で「必要な措置だが条件が厳しい」との回答が31%あった。「要件を強化する必要はない」も7%。
「日本株魅力低下」や「海外企業との提携が疎外される」、「必要な資本が得にくくなる」といった事業への影響を挙げる回答が4割に上った。
「企業価値向上の重しとなり、海外投資を呼び込む政府方針と矛盾する」(電機)、「他国との軋轢になる」(輸送用機器)、「資金調達の難しさが増すだけ」(小売)との反対意見も目立つ。