独自の試算から見えてくる!セブンイレブン、インセンティブ・チャージ見直しの本音とねらい

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24時間営業には積極的?消極的?

 ここでは、同社の平均日販よりも大幅に少ない日販50万円の店舗を例に考えてみたい。なお本稿では粗利益率を30%と仮定した。このケースでは、月間売上総利益額は

 月間売上総利益額=日販50万円 × 粗利率30%(仮定)× 30日=450万円

 となり、550万円以下のカテゴリーに入ることになる。

 次に、24時間営業を継続した場合の、収支増減を計算する。インセンティブ・チャージの3%減免がなくなる代わりに、月額定額で20万円支給されるので、店舗の収支増減は年間で次のようになる。

 日販50万円 × 粗利率30% × -3% × 365 + 20万円 ×12ヶ月=+75.7万円

 青字部分がインセンティブ・チャージにおいて減免される年間の金額、金色字が年間新たに支給される金額だ。この計算結果は同社の試算値+74万円に近似する。

 一方、24時間営業をやめ、24時に閉店し6時に開店するとしよう。この場合、インセンティブ優遇3%が消滅し(a)、さらに売上高も24時間営業より減少する可能性がある(ここでは10%減少すると仮定;b)。一方、本部からの手当てが月額一律で7万円支給(c)される。一方、アルバイト2名を時給1000円で6時間雇う必要がなくなる経費節減を想定してみる(d)。

 この場合の店舗の収支増減を計算すると

 (a)日販50万円 ×(1 – 10%)× 粗利率30%(仮定)× 3% × 365日=147万円

 (b)日販50万円 × 時短売上減10%× 粗利率30% × 店舗取分50%(仮定)× 365日=273万円

 (c)7万円 × 12ヶ月=84万円

 (d)2名 × 1000円 × 6時間 × 365日=438万円

 以上の収支は

   -147 – 273 +84 +438 = +102万円 

 以上、この試算では営業時間の短縮の方が有利になった。同社が社会的な目を気にして、24時間営業短縮を希望する加盟店に著しく不利な条件を提示することを控えたことも容易に想像される。ただし、ここでは不明な条件や仮定の妥当性もあると思われる。

 なお、同社(フランチャイザー)は、時短に起因する加盟店売上の減少がチャージ減少に直結するため、時短店舗の増加は何としても避けたいはずである。

 したがって、今回のインセンティブ・チャージ率の改定は、加盟店のオーナーに24時間営業短縮の選択肢を提示するものの、24時間営業を継続する加盟店にはそれにふさわしい適切なインセンティブを用意した、実質的にはどちらに加担したものでもない組み立てではないかと推察する。

 昨今、この問題に対する行政の関心の高さなどを考えると、この選択肢しかなかったのではないだろうか。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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