アングル:近づく決算シーズン、3月期企業の業績占う安川電機

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7月3日、米中首脳会談などのイベントを通過し、市場の関心は国内の企業業績に移ってきた。米国や欧州など主要中銀が金融緩和方向に傾く中、円高基調の為替が業績見通しに悪影響を及ぼすとの懸念が出ている。2018年10月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)
7月3日、米中首脳会談などのイベントを通過し、市場の関心は国内の企業業績に移ってきた。米国や欧州など主要中銀が金融緩和方向に傾く中、円高基調の為替が業績見通しに悪影響を及ぼすとの懸念が出ている。2018年10月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 3日 ロイター] – 米中首脳会談などのイベントを通過し、市場の関心は国内の企業業績に移ってきた。米国や欧州など主要中銀が金融緩和方向に傾く中、円高基調の為替が業績見通しに悪影響を及ぼすとの懸念が出ている。注目されているのは、11日に予定されている安川電機の決算。3月期決算企業の業績を占う「試金石」として関心が高い。

<円高進行で業績悪化懸念>

3日の東京株式市場で目立ったのは、直近買われていた半導体関連や電子部品関連の下落だ。日経平均の下落率0.53%(116円安)に対し、東京エレクトロンは0.86%安、村田製作所は2.46%安となった。

中でも話題となったのが安川電機。特段の売り材料が見当たらない中で4.94%下落。比較されやすいファナックの2.45%安や、シンフォニアテクノロジーの0.46%安を大きく上回った。

安川電機は6月3日に直近安値3025円を付けてから反発。7月1日高値の3880円まで約28%上昇していた。利益確定売りや戻り待ちの売りが出やすい状況だったことは確かだが、下げが強まった理由はそれだけではないという。

2月期決算の安川電機は、第1・四半期(3─5月)の業績が来週発表される。このため3月期決算が多い国内製造業の4─6月期業績を占う試金石となるとして注目度が高い。

安川電機の株価下落について「きょうに関しては、円高が業績見通しに与える影響を懸念して下げた部分も大きい」と、東海東京調査センター・シニアエクイティマーケットアナリスト、仙石誠氏は指摘する。

安川電機の今期の想定為替レートは1ドル110円、1ユーロ125円。1円円高方向に振れた場合の年間の営業利益に与える影響は、それぞれ2億0600万円、1億4000億円となっており、為替感応度は小さくない。

<1ドル105円なら、0.7%に増益幅縮小>

市場では、7月の米利下げがコンセンサスとなっている。長期金利に低下圧力がかかり、ドル安基調となりやすい。3日はトランプ米大統領が指名した米連邦準備理事会(FRB)理事がハト派的と受け止められたことも材料視され、ドル/円は一時107円半ばまで円高が進行した。

1日に日銀が発表した6月調査日銀短観によると、事業計画の前提となる2019年度想定為替レート(大企業・製造業)は109.36円で、現行レートに比べて1円以上の円安水準だ。アベノミクス以後の企業の為替想定レートは、実勢レートに比べて円高水準になることが多く、業績の上方修正余地として意識されることが多かったが、今回は逆に下方修正の懸念につながっている。

大和証券が行った試算(事業会社200社ベース)によると、1ドル110円、1ユーロ125円を前提にした2019年度の経常増益率は3.6%。1円円高となった場合の経常利益に与える影響額は対ドルが0.45%、対ユーロが0.11%となっている。仮に1ドル105円、1ユーロ120円に円高が進行した場合、19年度の経常増益率は0.7%に縮小する見通しだ。

ドル/円は年初のフラッシュ・クラッシュ時に104円前半まで下落した後、もみあうことなく107円台を回復した。目先は6月25日につけた106.78円が下値めどとなっているが、これを割り込むと目立ったサポートはなく、再び円高が進行する可能性もある。

日経平均の予想PER(株価収益率)は、日経データで12倍強。世界的にみても割安感があるが、企業業績が下がってしまえば割安感は薄らぎ、買いの意欲は減退する。3月期決算を占う安川電機がこの状況下で、どのような業績または見通しを示すか、市場の視線が注がれている。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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