[東京 10日 ロイター] – 2019年1─3月期の国内総生産(GDP)2次速報値は1次速報値から上方修正されたが、その上振れ幅は小幅にとどまり、6月月例経済報告を作成する上での基本的な景気判断を変えるものにはならないとみられている。足元では米中貿易摩擦の激化や米利下げの思惑で金融市場のボラティリティーが高まっているが、指標への波及はこれからとみられ、その動向によっては、企業や個人消費のセンチメントを下押しするリスクになりそうだ。
10日に発表された1―3月期国内総生産(GDP)の2次速報は前期比0.6%増、年率換算2.2%増(1次速報は前期比0.5%増、年率2.1%増)となった。小数点以下をみた場合、前期比は1次速報の0.52%増が0.55%増に修正されたに過ぎない。
法人企業統計を反映し1次速報ではマイナスだった設備投資がプラス転換した一方で、民間在庫や公共投資、住宅投資が下方修正された。
内需の寄与度はプラス0.1、外需はプラス0.4と1次速報と変わらず。輸入減少に伴う外需の寄与が成長率を押し上げた姿にも変わりはない。
内閣府幹部は、GDP2次速報を受けて「基本的な景気認識は、GDP1次速報時と変わらない」と述べている。
中国経済の減速が輸出や生産の弱さに表われている一方で、雇用・所得環境の改善や企業収益を背景に、内需はしっかり。上方修正された設備投資も、卸売りや小売り、サービス業などの非製造業が支えている構図となっている。
第一生命経済研究所・経済調査部主席エコノミストの新家義貴氏は「企業の投資意欲の底堅さが改めて確認されたことはポジティブ」としながらも、「1―3月期GDPは表面上高成長だが、輸入の急減が成長率を大きく押し上げており、内容は悪い。この評価を覆すほどではない」と指摘している。
「5月の連休明けから、市場を中心に経済状況は一変した」(政府関係者)―――。落としどころを探りながらうまく進展していると思われていた米中貿易協議が暗転し、世界経済に影を落としている。
日本の市場でも、連休前の4月24日に2万2362円と年初来高値を付けた日経平均株価はいったん、2万1000円割れの水準に下落。ドル/円も一時、107円後半まで円高が進んだ。
しかし、こうした情勢変化が実体経済に影響していることを示す経済指標はまだ出ていない。5月連休明け以降の状況を織り込んだ生産や設備投資を確認するためには、6月28日発表の5月鉱工業生産速報や7月1日発表の6月日銀短観などを待つしかない。
8・9日に福岡で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会合でも、世界経済については「様々な下方リスクを抱えながらも、年後半から来年にかけ堅調さを回復する」との認識を共有した。
大和証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「米国の第3弾関税発動による米中貿易摩擦の激化が織り込まれたデータはまだ発表されておらず、今後の下振れリスクは高い」とした上で、当面は外需面の弱さを、消費増税前の駆け込み需要による消費の踏みとどまりと、設備投資の底堅さの持続力が補う時間帯となるとみている。
新家氏も「輸出や生産の底打ちはまだみえておらず、貿易戦争が一段と激化している現状を踏まえれば、5月以降にさらに下振れる可能性も十分ある」と懸念を示している。
5月月例経済報告の総括判断は「景気は、輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」とし、4月の文言から「このところ」と「一部に」との表現を削除。基調判断は維持しつつも、総括判断を小幅ながら下方修正した。
(清水律子 編集:田巻一彦)