[東京 3日 ロイター] – 2019年1─3月期の国内総生産(GDP)は、1次速報値で落ち込んだ設備投資が法人企業統計を反映した2次速報でプラス転換する見通しだ。中国経済減速に伴う企業部門への打撃が懸念されたが、非製造業などの内需関連業種が好調で、設備投資全体では底堅さが維持された。だが、足元での米中貿易摩擦の激化などで製造業の業況感が落ち込む可能性が高く、先行きは予断を許さない情勢が展開しそうだ。
3日発表された同統計では、全産業の設備投資(ソフトウェアを除くベース)が前期比1.1%増となり、2四半期連続の増加となった。製造業は減少したものの、非製造業は過去最高益の後押しもあり、同2.8%増と全体を支えた。
農林中金総研総合研究所の南武志・主席研究員は、GDP1次速報でマイナスだった設備投資が2次速報値ではプラスに転換すると予測。「18年度の設備投資については、底堅く推移した」と分析。
企業の内部留保(利益剰余金)は466兆円と増加が続いているが、最近ではM&Aや設備投資にようやく資金が回り始めている。
今年1─3月期は、中国経済の需要減速で半導体関連や一般機械などの売り上げに影響が出た。だが、需要の強い自動車向け原材料や部品、国内再開発向けの建設機械やリース、安全対策投資などが全体を押し上げた。
GDP2次速報値が、設備投資の上方修正で1次速報値から押し上げられるかどうかについては、見方が分かれている。
多くの民間調査機関は、設備投資の上方修正を予測。その見方の半数が、GDP2次速報値の上振れをみている。
一方、みずほ証券・シニアマーケットエコノミストの末廣徹氏は、民間需要の各項目が1次速報値から横ばいと予測。「2次速報値では、個人消費と設備投資の減少が確認され、日本の景気後退が意識されるだろう」との見方を示す。
しかし、4─6月期以降も、堅調さが持続するとの見方は少ない。
産業界からは、5月連休以降の海外情勢について「これまでとは状況が異なる」(経済団体幹部)との声が上がっている。
米国による対中関税の対象が、今年6月下旬から3250億ドル分の輸入に拡大され、今秋にメキシコからの輸入品への関税が25%に引き上げられれば、世界のサプライチェーンが崩れ、企業コストが跳ね上がると懸念している。
経済官庁幹部は「1─3月期は、消費と設備投資がもっと悪化するとみていたが、トレンドから外れるような状況にはならなかった。ただ、今後は米国による関税引き上げなどで設備投資の様子も変わってくる可能性があり、よく見極めたい」としている。
企業部門に加えて、個人消費に関しても不安材料はある。食料品やサービス関連の値上げが相次ぎ、景気ウォッチャーや消費者態度指数といった消費者マインドは弱い動きが続いている。
令和改元効果や10連休下での消費刺激効果、雇用情勢のタイト化と時給上昇、消費増税前の駆け込み需要といったプラス材料と、海外情勢発の懸念材料との綱引きとなりそうだ。
(中川泉 編集:田巻一彦)