[シドニー 24日 ロイター] – 日本の10連休中に外国為替市場で相場が一瞬で急激に動く「フラッシュクラッシュ」が起きるのではないか、と世界各地の投資家が警戒感を強めている。市場参加者が減って流動性が細った際に、フラッシュクラッシュが発生しやすいからだ。
新天皇即位の祝日などが追加されたため、日本では4月29日から5月6日まで市場は休みとなる。そこでロイターが複数の資金運用担当者やアナリストに取材したところでは、賢明な投資家は円のポジションを減らしたり、外為取引のヘッジを拡大するなどさまざまな備えを進めている。また全体として規模が大きく、一斉に動く傾向から市場を混乱させることがある日本の個人投資家のポジションを、注視する向きもある。
ウェストパックの通貨ストラテジスト、ショーン・キャロー氏は「間もなく日本の外為市場の流動性がなくなる事態は、企業にとって危険をもたらす半面、恐らく投機筋にはチャンスとなる」と指摘。事業会社の場合は、1月に見られたような相場の不安定化がストップロスを誘発し、円以外の通貨取引でさえ巻き添えになって打撃を受ける展開に用心するべきで、外為ポジションのヘッジ比率を引き上げるのが妥当ではないかと提言した。
今年は既に2回、日本の休場時に投資家がフラッシュクラッシュに見舞われた。最初は正月休み中で、安全資産とされる円が高騰し、リスク志向に左右されやすいいくつかの通貨が急落。さらに2月にもスイスフランが乱高下した。
ブローカーのXMの投資アナリスト、Marios Hadjikyriacos氏は「来週のほぼ半ばの5月1日を特に注意したい」と話す。日本と中国が休みになるほか、欧州の大半もレーバーデーで市場が閉まるからだ。
同氏によると、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を前に米国のトレーダーが取引を開始するまで、流動性は極めて乏しくなる見通し。4月30─5月1日のFOMC自体も、薄商いの中では大きなリスクになりかねない。
中国は4月30日と5月2日に重要な指標を発表し、米中貿易協議も来週再開する。
トレーダーが心配するのは、何か悪いニュースが出て、リスク資産投資の資金調達のために売り持ちにされている円の買い戻し、つまりキャリートレードの解消を引き起こすことだ。1月に起きたのはまさにこの動きで、ドル/円が瞬間的に4円ほど円高に振れた。
<危険な低ボラティリティー>
一部のアナリストは、日本の個人投資家に好まれているキャリートレードの1つ、円売り/豪ドル買いの反対の円買い/豪ドル売りに向かうことを勧めている。豪ドル/円の予想変動率を買い持ちにして、相場の乱高下への実質的な保険をかけるべきとの声も聞かれる。
東京金融取引所のデータからは、日本の個人投資家の間でも17日時点でドル売り持ち/円買い持ちの規模が過去最高の22万3202枚に達しており、連休をにらんだポジションが構築されている様子がうかがえる。
ただ日本の個人投資家は、トルコリラと南アフリカランドの買い持ち規模が依然として非常に大きく、1月のフラッシュクラッシュ時を上回っている。NABの通貨ストラテジスト、レイ・アトリル氏はノートに「連休中にリラ(ないしランド)が大きく下落すれば、ポジション調整によって円が激しく動きやすくなる。それだけでなく、ドルが著しく強含めば、円安が加速してしまう」と記した。
東京金融取引所は、個人投資家に対して証拠金を増やしたり、連休前にポジションを軽くすることなどを要請している。
投資家が世界的に目先の円急伸に賭けようという流れは、オプション市場からも読み取れる。
皮肉なことに、ここ数カ月間で通貨ボラティリティー全般が低下したことが、フラッシュクラッシュのリスクを増幅させている面もある。何しろ足元までは市場の落ち着きが続くとの期待から、予想変動率に対する売り意欲が強まっていた。だからボラティリティーが突然跳ね上がれば、予想変動率の買い戻しを迫られる市場参加者が多い。
実際円の1カ月予想変動率は現在4.5%で、昨年の大型連休中の約7%より低い。
ソシエテ・ジェネラルの通貨ストラテジスト、ケネス・ブルー氏は、過去数年間は日本の大型連休は外為市場にとって重要イベントでなかったものの、今のボラティリティーの低さによって市場にもたらすリスクが高まってきたとの見方を示した。
(Swati Pandey記者)