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今までとは違う手法のコミュニケーション、店頭施策で新規ユーザーとの接点を増やす

[アクアペット]

鉢を使ったビオトープなど、メダカブームはペット売場以外に園芸売場への広がりも見せている

ホームセンター(HC)におけるアクアペットカテゴリーは、長らくペット部門の重要な柱として位置づけられている。アクアペットにはトレンドやブームがあり、その都度市場動向は変化するものの、近年は観賞魚の持つ癒やし効果やリフレッシュ効果、子供の情操教育効果などが再認識されており、また関連機器の進化によって飼育がより手軽になっていることから、新たな需要層の取り込みも期待される。(本誌:上明戸聡)

機器の進化によって飼育はより手軽により快適に

 以前から行われてきた金魚や熱帯魚などの観賞魚飼育に加え、現在アクアペットの範囲が大きく広がっている。テラリウムや水草レイアウトなど、楽しみ方も多様化している。近年はメダカがブームの傾向にあり、好きな種類のメダカを楽しむ層も増えている。

 これに合わせて店頭提案も多様化しているが、その一方でアクアペットの参加人口は大きく伸びてはいない。近年は祭りの夜店で金魚すくいをする機会も少なくなり、子供にとっての接点自体が減少傾向にある。また以前は金魚などを飼育していたが、やめてしまったという経験を持つ人も多い。

 これらの多くは照明や水質管理などを適切に行い、魚の健康管理を続けていくことが意外に面倒だったという実感を持っていることも少なくない。

 こうした層に対しては、以前より手軽になっただけでなく、より美しく楽しいアクアペットの楽しみ方を訴求していく必要がある。ビギナーに必要な機器がセットされた製品の販売は以前から行われているが、現在は機器が大きく進化し、扱いやすくなっている。こうした進化によって、より快適な飼育が楽しめることをアピールしていくべきだろう。

多様な楽しみ方提案でインテリア性を訴求

 こうした状況の中で、より多様な楽しみ方を提案することによる新しい需要開発への努力も進められている。

 たとえば小さなボトルを使用し、定期的に水替えなどを行うことで、観賞魚や水生生物の飼育を楽しむことができる「ボトリウム」提案などがその1つ。砂や水草を入れたボトルは、コンパクトでインテリアにも適しており、デスク上への配置も可能だ。

 そのほかにも、アクアテラリウムやメダカが泳ぐ睡蓮鉢を使ったビオトープなど、アクアペットはDIYや園芸、インテリアなどとの親和性も高く、そうしたカテゴリーの売場との連動で新たな需要の取り込みが期待される。HCへの来店客層と観賞魚の飼育者層も近く、まだまだ市場の拡大を図るための手法、提案はありそうだ。

 HC店頭でも、こうした多様な楽しみ方を提案し、ライフスタイルにマッチしたインテリアとしての魅力を発信していくことが重要だ。

 

MD FOCUS:常に消費者から学び、独自の研究・開発体制で自社工場生産の強みを徹底的に活かす

ジェックス

観賞魚用品のパイオニアであるジェックスでは、自社工場と自社研究施設の開発能力を背景に、消費者からも販売店からも支持されるモノづくりを続けてきた。同社代表取締役社長・五味宏樹氏に今後の事業の方向性などをお聞きした。

自社で責任が持てる製品供給にこだわる

ジェックス 代表取締役社長・五味宏樹氏(左)、グッドデザイン賞を受賞した「AQUA-U」(右)

 ジェックスでは、高品質の水槽、照明やろ過システム、エアーポンプなどの開発に継続的に取り組んでいる。

 五味氏は「技術は日々進化しており、消費者のニーズも変わっていきますので、常にチャレンジを続けています。AGC(旭硝子)グループさんの特殊なガラス素材や、ガラスを接着するシリコンについても専業メーカーと共同開発を行うなど、徹底して自社が直接関与する形での開発・製造・供給体制の整備にこだわってきました」と言う。

 こうした努力によって、より見やすいガラスやフレームレス水槽などを実現。結果、国内での水槽カテゴリーシェアは70%を超えるまでに成長した。

 しかし同社の視野にあるのは、実際に使用するペットオーナーだけでなく、販売店への配慮だ。五味氏は「観賞魚用品は美しさだけでなく、高い信頼性が必要です。水と電気という相容れないものを扱う以上、ひとたび製品に問題があれば、水漏れやペットの死亡など、大きな事故につながる可能性があります。こうしたクレームはまず販売店さまの元に届きますので、それを徹底的に防止していきたい」と語る。

 同社では、年間100万台近く出荷する水槽の1個たりとも、クレームの出ない製品として送り出そうという意識が徹底されている。また、インドネシアの自社工場では、さまざまな用品を生産しており、ガラス水槽製造では世界最大級の規模。2003年にISO9001を取得しており、高品質の製品を日本、世界に供給している。またここで生まれる製品には2年から3年間の品質保証が付けられている。

インテリアに溶け込むフレームレス水槽をシリーズ商品化。自社工場で生産する水槽は、AGC(旭硝子)グループの高品質ガラスを採用している

技術開発の進化で観賞魚飼育の敷居を下げ需要拡大につなげる

 同社が昨年発売した「AQUA‐U」は、室内インテリアに適したシンプルなデザイン性に加えて、関連機器をコンパクトに収納することで水槽内を極限まですっきりさせ、レイアウトの自由さを広げた製品。2018年のグッドデザイン賞も受賞している。こうした美しく手軽に扱える新製品の登場は、インテリア水槽の新しい需要創造につながる。

 また五味社長は、「どの産業でも少子高齢化という環境に直面しています。何もしなければ需要は増えていきませんが、たとえばホームセンター店頭で、以前に飼育経験を持つ高齢者の方々に、技術進化で以前よりエアーポンプが静かになり、水質管理も簡単になったということを実感していただく。また、金魚を扱うイベントの開催や“ボトリウム”提案などで、お子さまにも関心を持っていただく。さらに、金魚の画像をInstagramに投稿してもらうキャンペーンなども実施します。こうした多様な努力が重要だと考えています」と語る。

 また同社は、アクアペットの癒やし効果などについての研究を早くから産学共同で推進している。「こうした研究は、直接自社製品の販促につながらなくても、長い目で見て市場全体の活性化につながっていくと信じています」(五味社長)