データで見る流通
拡大続く食品通販市場「ショッピングサイト」が「生協」に迫る

2017/02/01 00:00
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    文=大篭 麻奈

    矢野経済研究所
    フード・ライフサイエンスユニット フードグループ
    上級研究員

     

     ライフスタイルの変化やスマートフォンの急速な普及などにより、ネット通販(EC)を中心とした食品通販市場が拡大を続けている。

     

     食品は、自分の目で見て、手に取って確かめてから購入したいと考える消費者が多いため、実店舗へのニーズは底堅い。しかし、2013年ごろから、「Amazon.co.jp(アマゾン)」「yodobashi.com(ヨドバシ・ドット・コム)」など、これまで非食品分野で事業を拡大してきた大手ECサイトでも食品の取り扱いが目立つようになり、食品ECの市場規模を押し上げている。また、オフィス用品通販のアスクル(東京都/岩田彰一郎社長)が、食品・日用品に特化したECサイト「LOHACO(ロハコ)」を立ち上げ、事業規模を年々拡大している。

     

     こうしたなか、食品通販の15年度市場規模は、対前年度比6.3%増の3兆3768億円と拡大した(図1)。とくに、ミネラルウオーターや茶系飲料、炭酸水などの飲料水、レトルト食品、シリアル、健康食品などの売上が伸びている。こうした常温流通が可能で、賞味期限が長く、重量のある商品は通販チャネルに適しており、食品通販市場の拡大に寄与している。

     

    図1●食品通販の総市場規模推移

     

     15年度の流通チャネル別の構成比は「生協」が40.7%、「ショッピングサイト」が35.0%、「食品メーカーダイレクト販売」が17.3%、「ネットスーパー」が3.8%、「自然派食品宅配」が2.3%、「コンビニエンスストア宅配」が0.8%である(図2)。近年の特徴としては、ショッピングサイトが大きく成長しており、構成比が最も大きい生協に迫る規模となっている。また、ショッピングサイトと同様に、食品スーパー(SM)や総合スーパーが提供するネットスーパーも堅調だ。

     

    図2●食品通販市場のチャネル別市場構成比(2015年度)

     

     一方、食品メーカーのダイレクト販売は、やや頭打ちとなっている。配送料無料となる金額まで商品を購入しようとしても、そこまで必要な商品が揃っていないため利用が拡大しないことなどが考えられる。

     

     成長著しいショッピングサイトは、「楽天市場」や「Yahoo! ショッピング」など、サイト内に出店する企業が受注や発送を行うモール出店型と、「アマゾン」「ヨドバシ・ドット・コム」「ロハコ」などのように、サイト運営者が商品を仕入れ、受注・在庫管理・発送などを直接行う直販型の2つのタイプがある(「アマゾン」にはモール出店型の「アマゾンマーケットプレイス」もある)。

     

     モール出店型と直販型のいずれも伸長しているが、近年、顕著に伸びているのが直販型である。食品・非食品を問わず、ひとつのサイトで幅広い商品を購入できる点が強みで、直販型のEC企業は顧客の囲い込みに向けて、取り扱い商品の拡大、ポイント施策の拡充、物流の整備などを進めている。一方、従来の食品販売の主力チャネルであるSMはEC企業にお客を奪われることを避けるための施策を強化するなど、競争は厳しさを増している。

     

    *本調査における食品通販とは、①ショッピングサイト(カタログ通販含む)、②生協、③自然派食品宅配、④ネットスーパー、⑤コンビニエンスストア宅配、⑥食品メーカーによるダイレクト販売(直販)、を対象とする。また、製品(商品)については生鮮3品(水産、畜産、野菜・果物)、米、飲料(ミネラルウオーターは含み、宅配水は含まない)、酒類、菓子類、健康食品、その他加工食品を対象とし、日用雑貨などを含まないものとする。

     

    (「ダイヤモンド・チェーンストア」2017年2/1号)

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