データで見る流通
購買・メディア接触行動からとらえる生活者理解の重要性

2015/09/01 00:00

文=川畑 夏奈

インテージ 次世代プロダクト開発部

 

 生活者の価値観や情報への接触方法が多様化し、購買行動も変化するなか、競争が激化する小売業にとって、生活者理解がますます重要となっている。

 

 生活者理解のための調査の方法はさまざまあるが、今回はアルコール飲料を例に、購買行動とメディア接触行動をとらえることができるログデータを用いた、セグメンテーション・ターゲット分析による方法を紹介したい。ログデータには生活者がふだん意識していない行動も含まれているため、このデータを分析することで、生活者の実行動に基づいた販売計画が可能となる。

 

 まずアルコール飲料の購入本数や購入カテゴリー数、平均単価など、購買データだけを使ってクラスター分析を行ったところ、購入者の行動パターンは7つのクラスターに分類された。各クラスターには、アルコール飲料の購買行動の特徴に基づき、名称をつけた。

 

 各クラスターの人数構成比とアルコール飲料の購入容量構成比を確認すると(図表1)、「高頻度大量買い」「飲みたいときに価格志向」「飲みたいときにバラエティ志向」の3つのクラスターだけで全体の約70%を占め、これらの層がアルコール飲料市場全体を支えていることがわかる。一方、人数構成比が全体の30%と最も多い割合を占める「月1以下低アル」は、購入容量構成比がわずか3%と最も低い。

 

図表1●クラスター別購入カテゴリー構成比

 

 ちなみに、購入カテゴリーを調査すると、全クラスターの購買の中心はビール類だが、「計画的ビールケース買い」ではビール類が80%以上を占めるのに対し、「月1以下低アル」「飲みたいときにバラエティ志向」では50%と、クラスターによって購入カテゴリーの比率は異なる。

 

 次に、消費価値観や、生活価値観のアンケート調査結果の傾向なども使ったカスタマーキャラクター分析(図表2)を行い、クラスター像を明らかにした。さらに、メディア(TV、パソコン、モバイル端末)の接触時間や接触コンテンツなどの傾向も確認した。

 

図表2●カスタマーキャラクター分析

 

 こうした情報をもとに、各クラスターに適したマーケティング施策の方向性を探ってみたい。一見すると、購入容量構成比が全体の25%を占める「高頻度大量買い」は最も重要なターゲットに見える。しかし、気に入ったものを買い続ける傾向があり、ブランドスイッチをしない可能性が高い。

 

 それに対して、「高頻度大量買い」の次に購入容量構成比の高い「飲みたいときにバラエティ志向」は、新商品やグルメ情報に敏感で、食に対するこだわりを持つクラスターだ。ワインやウイスキーなどの購入構成比がほかのクラスターと比べ大きく、新商品発売の際も重要なターゲットとなる。また、アルコール飲料に合う食品の提案など、店頭施策とも結びつけやすいだろう。

 

 同じように購入容量構成比の高い「飲みたいときに価格志向」は、食に対するこだわりが薄く、簡便さを求める。購入単価が低めで、特定の商品へのこだわりはあまりないタイプだ。ただし、パソコンやモバイル端末などを使ったオンラインでの情報接触比率が高い傾向があり、購買前にオンラインでお得な情報や商品情報を届けることが、店頭での購買につながるかもしれない。

 

 一方、購入容量構成比が最も低い「月1以下低アル」は、アルコール飲料市場では無視してもいいように思える。しかし、人数構成比は30%を占めているほか、若者層も多く、長期的な視点ではユーザー育成のためのプランが必要になってくる。

 

 このように、購買行動、購買意識、情報接触行動をとらえることで生活者を理解し、誰にどういった情報をどういったタイミングで届けるかということは、小売業にとって今後重要になっていくだろう。

 

 

※本分析はグーグルのマーケットインサイトチームの協力のもとに行った。

 

 

(「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年9/1号)

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