データで見る流通
節約意識が定着した生活者、2015年はメリハリ消費に

2015/08/01 00:00
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    文=菅 順史

    博報堂生活総合研究所 研究員

     

     博報堂生活総合研究所は、生活者の気持ちの変化を読み解くため、消費に対する意欲を指数(100点満点評価)で回答してもらう調査(※1)を実施し、2012年5月分から公開している。本稿では、その調査結果から2015年の消費動向をみていきたい。

     

     14年4月の消費税増税以降、物価上昇も重なり消費意欲は増税前の水準に戻らない月が多かったが、15年5月は13年並みに回復。7月も増税前に近い水準となった(図表)。消費意欲が上がった理由を自由回答で見てみると、5月は「ゴールデンウィーク」、7月は「ボーナス」「夏休み」といった季節的な要因を挙げる声が目立った。

     

    図表●消費意欲指数(全体)

     

     しかし、回復基調にあるとは言えない。15年の消費動向の特徴は、季節要因などで消費意欲が一時的に回復しても、翌月にはまたすぐ下がってしまうことだ。調査でも、「今月までに多く使った反動でセーブする」「ほかの出費に備えて消費を控える」といった声は毎月一定数見られる。生活者は、消費税増税や物価上昇を経て節約意識が根付き、「出費してもいい」ことと「出費を抑える」ことのメリハリをつけて消費をしているようだ。

     

     また、消費意欲指数を時系列で見ると、50点を超える月は13年、14年と年々減っており、消費意欲のベースが下がっているのがわかる。さらに、7月上旬に実施した景況感に関する調査(※2)では、「あなた自身の経済状況について、これからどうなると思いますか?」という質問に、5段階評価で「大変良くなると思う」「やや良くなると思う」と答えた人は12.6%だったのに対して、「大変悪くなると思う」「やや悪くなると思う」と答えた人は3倍以上の38.1%となった。経済的な不安がブレーキとなり、思い切った消費につながりにくい生活者の気持ちがうかがえる。最新の調査(※1)でも、例年なら消費意欲が上がる8月にもかかわらず、15年は7月と同水準にとどまった。

     

     今後も、経済的な理由から節約意識は定着し消費意欲が上がりきらない状況が予想される。しかし商機もある。前述のように「出費してもいい」理由(主に季節的な要因)があれば消費意欲は上がっている。出費を抑える意識が前提にあるものの、季節要因などで抑制意識が緩むと消費意欲が回復する。このメリハリ消費はこれからも続きそうだ。

     

     これを流通視点で見るとどうなるか。例年9月~11月は消費意欲指数が上がらない時期だが、15年9月は6年ぶりの「シルバーウィーク」(5連休)がある。この大型連休を「出費してもいい」理由にできれば具体的な消費につながるだろう。当研究所が実施した調査(※2)では、「これから力を入れたい日常の生活行動」のランキングで「睡眠」「健康」「家族との時間」がトップ3となった。これをヒントに考えると、祖父母と孫のコミュニケーションを促す体験づくり、疲労回復につながる商品カテゴリーの提案などにビジネスチャンスがある。「睡眠」「健康」「家族との時間」をキーワードに消費意欲を刺激できるかが鍵となりそうだ。

     

     

    ※1:生活インデックス調査 消費動向編
    地域:首都40㎞圏、阪神30㎞圏、名古屋40㎞圏
    手法:インターネット調査
    対象:20歳~69歳男女1500人
    時期:毎月上旬に来月の消費意欲を調査

    ※2:これからの景況感と生活力点に関する調査
    地域:首都40㎞圏、阪神30㎞圏、名古屋40㎞圏
    手法:インターネット調査
    対象:20歳~69歳男女1500人
    時期:2015年7月2日~7月6日

     

     

    (「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年8/1,8/15合併号)

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