データで見る流通
アジアの消費者は、世界で最も景気の先行きについて楽観的な見通し

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文=岩渕 真理

ニールセン クライアントビジネスパートナー コンシューマーインサイト ディレクター

 

 アジアの消費者は世界で最も景気の先行きについて楽観的な見通しを持っており、とくにこの1年でその傾向は強まっている。

 

 ニールセンは2015年3月、世界60カ国の3万人以上の消費者に対し、景気の先行き観や今後の購買意向に関する「世界消費者景況感調査」を実施した。この調査では、国内の雇用見通し、個人の経済状況、直近の消費意向の3項目に関する回答を消費者景況感指数として数値化している。アジア太平洋地域で調査対象となった14カ国のうち、9カ国で「楽観的」とされる100ポイントを超え、同様に9カ国で14年第1四半期を上回るポイントとなった(図表)。

 

図表●世界消費者景況感指数

 

 アジア太平洋地域で指数がいちばん高かったのはインドの130ポイント(pt)で、実に6四半期連続で上昇を続けている。これは、新政権による経済改革や景気刺激策による効果が表れることへの期待を反映したものと思われる。ただ、一般消費財や自動車の販売動向を見ても回復の速度は緩やかで、消費市場が成長軌道に乗るにはまだ時間がかかるとみられる。

 

 また、昨年からの動きを見ると、ベトナムと台湾でこの1年の伸びが大きく、それぞれ14年第1四半期の99ptから112pt、76ptから88ptへの上昇が見られる。

 

 ベトナムでは、12年から13年にかけGDP成長の鈍化に伴い消費者の景況感も横ばい、もしくは下落傾向にあったが、14年から上昇に転じ、再び10年当時の水準に戻っている。ニールセンが収集している一般消費財の売上の名目成長率も14年第1四半期のマイナス1.9%から15年のプラス4.0%へと上昇に転じ、マインドと消費行動の両面での回復が見られる。

 

 台湾では、失業率の低下や消費者物価の安定により、景況感の上昇につながったと考えられる。本調査でも「労働市場の状況は良い」と回答した人数は、14年第1四半期から13%増加している。

 

 一方、中国では11年以降横ばいが続いており、経済の成長鈍化を反映したものと考えられる。ただ、Eコマース(ネット通販)の伸長や来日した中国人観光客の「爆買い」に見られるように消費意欲は非常に旺盛であり、消費者が中長期的な景況感と短期的な消費を分けて考えているように見受けられる。前回調査(14年第4四半期)の結果になるが、自由に使えるお金を何に使うかという質問に対し、「バケーション/旅行」と回答した人数は8%増加している。

 

 日本では、05年に調査が始まって以来最高となる82ptであった。14年4月の消費税率アップによりいったん上昇傾向が止まったが、15年第1四半期で再び上昇傾向に戻っている。台湾同様、雇用状況に関する見通しの改善が顕著である。

 

 このように、各国で景況感が上向きの傾向にあるが、最後に消費者の購買を取り込むためのヒントとなる数字を見ておきたい。

 

 最新の調査では、新製品に関する興味や購買時の行動について調べており、アジアの消費者は世界のほかの地域と比べ、新製品を試す際にやや慎重であることがわかっている。「新製品を購入する前に、時間を置く」との回答は62%で、欧州、北米、中南米、中東・アフリカの4地域との比較でトップ、「ブランドスイッチに抵抗がない」との回答は45%で5地域の中で最低となっている。新製品を試す時の情報源としては、「家族や友人の薦め」「テレビ広告」といった既存の媒体に加え、インターネット検索やインターネット広告が挙がっており、なかなか動いてくれないアジアの消費者をどのように引きつけるかについての示唆となると思われる。

 

 

(「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年7/1号)

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