小売業のデジタルマーケティング最前線:イオンとセブン&アイの取り組み

小坂 義生
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イオン、デジタルマーケティングのノウハウ吸収

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2018年12月、イオンは欧州最大級のスポーツECプラットフォーム企業のシグナ・スポーツ・ユナイテッドに出資。写真はロイター

 イオンは、デジタルシフトを加速すべく、様々な投資を進めている。17年1月にはフィンテックやITベンチャーに投資する米ベンチャーキャピタルのソーゾー・ベンチャーズ(Sozo Ventures)に出資。18年4月には、 “ミレニアルズ世代のためのコストコ”と呼ばれるECベンチャー、米ボックスト(Boxed)に出資。同社の出資はECビジネスだけでなく、物流やAI、データ活用のノウハウを学ぶことを目的としている。

 2018年12月、イオンは欧州最大級のスポーツECプラットフォーム企業のシグナ・スポーツ・ユナイテッド(SIGNA Sports United:以下、シグナ・スポーツ)に出資し、発行済株式の7.5%を取得した。この出資の背景には、シグナ・スポーツのアジア進出の意図もあるが、イオンにとってはデジタルマーケティングのノウハウを取得することも視野に入れていることもある。

 シグナ・スポーツは、各分野に特化したEC企業の買収によって事業ドメインを拡大させてきた。そのシナジーを最大化するべく、ITや物流などのインフラ、データ解析やデジタルマーケティングにまつわる技術に積極的に投資しているのが特徴だ。

 イオンの岡田元也社長は「日本では、今後5年間でスポーツ用品におけるネット通販の市場規模が倍増する。イオンからシグナ・スポーツへの出資は、2020年東京オリンピックに向け、最適なタイミングといえる」と評価。また、若生信弥副社長は「シグナ・スポーツのデジタルマーケティングのノウハウを吸収したい」と出資のねらいを説明する。

 

セブン&アイ、アプリダウンロード数1000万突破

写真●セブン-イレブンアプリ

 セブン&アイHDでは、2018年6月に刷新したアプリのアプリの累計ダウンロード数が、19年1月に1,000万を突破した。当初は1年を目標としていたが、5ヵ月前倒しで達成した。

 セブン&アイのアプリは、利用者がスマホ画面上に表示されるバーコードをレジで提示すると、商品の購入実績が蓄積されていく。購入額に応じた特典を用意し、優良顧客を囲い込む仕組みだ。アプリを利用するにはメールアドレスや生年月日などを登録することが必要となる。アプリの会員情報はネット通販「オムニ7」とも連動し、ネットと実店舗で顧客情報を一元管理する。

 18年12月からは、セブン-イレブンとイトーヨーカドーに加えて、「西武・そごうアプリ」のサービスを開始。19年春にはアカチャンホンポ、ロフトのアプリもセブンマイルプログラムに連携しスタートする。

 セブン&アイグループ横断型ロイヤリティプログラムである“セブンマイルプログラム”は、マイルのランクに合わせて、無料アプリ体験や特典プログラムに応募することができる。

18年6月に研究組織「セブン&アイ・データラボ」も発足した。 写真はロイター

 なお、セブン&アイは、アプリの刷新と同時に、18年6月に研究組織「セブン&アイ・データラボ」も発足した。NTTドコモや三井住友フィナンシャルグループ、ANAホールディングスなど異業種10社が参加し、各社が持つビッグデータをつなげる。参加企業はデータを、個人を特定できない範囲に加工し、まずセブン&アイと1対1で研究課題を設定してデータを組み合わせる。

 セブン&アイはこれまで、自社の持つデータを活用し、課題の解決に取り組んできたが、自社で保有するデータからだけでは仮説の検証に限界があり、より複雑化していく世の中の課題に対応することが難しくなってきいる。異業種のデータと連携することで、自社だけでは見えなかった消費者ニーズを発見し、新たな事業につなげたい考えだ。

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