‟超”拡大する冷凍食品市場 食卓の異変と冷食の進化、小売業の新しい売場づくりとは

湯浅 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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既存店の売場拡大、新商品開発に取り組む各社

 小売業各社はこの成長市場をつかむべく、さまざまな施策を打っている。イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は、22年8月に約1500アイテムを取り扱う冷凍食品専門店「@FROZEN(アットフローズン)」をオープン。同業態は客単価が既存店よりも約20%高く、高単価の商品の訴求に成功している。同社は、既存店においても向こう3、4年ですべての既存店の冷凍食品売場を拡大させていくという。

 総合スーパー(GMS)を運営するイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)も「店舗改装における冷凍食品売場の拡大は優先順位が高い」(同社広報担当者)という言葉のとおり、冷凍食品売場を拡大させた店舗改装を行っている。商品面においても個食ニーズに対応したプライベートブランド(PB)の「EASE UP(イーザップ)」を開発し、「自宅で、専門店の味」という価値を訴求する。

 宅配事業を主とするコープデリ生活協同組合連合会(埼玉県/土屋敏夫代表理事理事長)は、オリジナル商品の冷凍ミールキットをニチレイフーズ(東京都/竹永雅彦社長)らと共同開発。同カテゴリーは、40代以下の若い組合員の支持を獲得している。

 コンビニエンスストア(CVS)では、ローソン(東京都/竹増貞伸社長)が、冷凍デザートや冷凍刺身、冷凍ベーカリーなどの「新機軸」のPB開発に邁進する。既存店に冷凍平台ケースを導入するなど、冷凍食品売場拡大にも取り組んでいる。

 シズル感に乏しく、無機質になりがちな冷凍食品売場で、独自の取り組みを行っているのが、福島県を拠点にSMを運営するリオン・ドールコーポレーション(福島県/小池信介社長)だ。同社は、21年5月に、冷凍食品を前面に打ち出した新業態「みんなの業務用スーパー Lynx(リンクス)」をオープン。生鮮冷凍食品売場にレシピ提案のPOPを設置するなど「食卓で食べるイメージが湧きやすい」売場を構築している。

 食品卸売業においては、伊藤忠食品(大阪府/岡本均社長)は、テクニカン(神奈川県/山田義夫社長)と共同で冷凍食品ブランド「凍眠市場(とうみんいちば)」を立ち上げた。テクニカンの独自技術で、素材の味を解凍後そのまま再現できる冷凍刺身や冷凍生肉などを展開している。

 また、ロピア(神奈川県/髙木勇輔社長)は傘下企業によるオリジナル商品開発で、30~40代の子育てファミリー層に「大容量」「専門店の味」といった価値を訴求し、他社との差別化を図っている。

 本特集ではSM、GMS、CVS、食品卸売業と、多岐にわたる業態で冷凍食品需要をつかもうとしている各小売業を取り上げるとともに、専門家らによる寄稿、有力店舗の冷凍食品売場の調査結果を掲載する。

 今後も成長を続ける冷凍食品市場と変化する消費者のニーズを理解するべく、役立ててほしい。

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記事執筆者

湯浅 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1996年生まれ。シンガポール出身。同志社大学グローバル・コミュニケーション学部卒業後、経済メディアで記者職に就く。フリーライターを経て、2021年12月ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。大学在学中に1年間のアメリカ・アリゾナ州立大学への留学を経験。好きな総菜はローストビーフ、趣味は練馬区を散歩すること。

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