食品スーパー(SM)業界はコロナ禍において、外出自粛や在宅勤務の広がりにより高まった内食需要を取り込み、各社の業績は売上・利益ともに好調に推移。“コロナ特需”の恩恵を大きく受けた。しかし2021年度の決算では、軒並み増収増益だった前年度から一転、企業によって明暗が分かれた。コロナ特需の終焉と、アフターコロナの世界の到来を予感させる結果となり、個社の実力が再び問われるフェーズに入った。
コロナ特需に沸き、多くの企業が業績を伸ばしたSM業界。感染状況の深刻化とともに、政府による外出制限の要請や、各企業におけるリモートワークの広がりなどによって、在宅時間が増加。まとめ買い需要や巣ごもり需要が増大し、食品や日用品などの生活必需品を扱うSMへのニーズが急速に高まっていった。外食産業からの需要シフトも追い風になり、酒類や嗜好品など単価の高い商品がよく動いたことも、売上・利益の伸長に寄与した。
しかし、21年度のSM各社の決算数値を俯瞰すると、特需の終焉を感じさせる様相を呈している。まず営業収益については、前年度との比較が可能な23社のうち、11社が増収、12社が減収と、文字どおり明暗がくっきりと分かれる結果となった。一方、各社の営業利益に目を向けると、16社で減益。特需真っ只中だったとはいえ、全企業が増益、なかには“3ケタ増益”を果たす企業も複数社あった前年度と比べると、状況は一変している。
背景としてはやはり、特需の反動減が挙げられる。収益が急伸した20年度の実績を超えることは容易ではなく、実際に21年度の業績について減収・減益を予想する企業も少なくなかった。また、依然としてコロナ対策が求められているとはいえ、ワクチン接種の拡大や感染者数の抑え込みによって徐々に人々の生活は日常を取り戻しつつある。そうしたなかで足元では外食需要に復活の兆しもみられ、さらにはコロナ禍で定着したECやフードデリバリーの利用といった買物行動・ライフスタイルの変化も指摘できる。いずれにしても、SMの“独擅場”だった時期は終わりに差し掛かろうとしている。
つまりSM業界は、コロナ前がそうだったように、各企業の実力──価格競争力や商品力の向上、売場づくり、デジタル対応といった従前の課題に対し、いかにきめ細かく対応できるかが再び問われることになったと言える。
ライフは盤石のトップを維持
次に、上位企業の21年度の業績を詳しくみていこう。
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