「NRF2022」で語られたDXで加速する小売業の新たな改革とは

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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「NRF2022」で語られたDXで加速する小売業の新たな改革とは
奥谷 孝司氏

【特別対談】

オイシックス・ラ・大地株式会社専門役員COCO/
株式会社顧客時間共同CEO取締役
奥谷 孝司 氏

伴 大二郎氏

株式会社顧客時間プロジェクトマネージャー
株式会社ヤプリ・エグゼクティブスペシャリスト/
db-lab代表
伴 大二郎 氏

 

DXをさらに加速することが重要

 「NRF2022」に行くとともに「CES2022」(家電・テクノロジーの見本市)にも行った。CESでも昨年あたりから、かなりリテールを意識したプレゼンテーションが増えている。昨年はCESでリテールに関連した話題は6つあったが、今年はそれが10に増えた。

奥谷 テクノロジーを使って機能的な買物価値だけでなく、快楽的な買物価値に発展させようという動きが明確に見えてきた。

 「NRF2022」のテーマは「アクセラレート」。つまり「加速させる」と。前提としてパンデミックで企業はDXの取り組みを本格化した。そしてコロナ禍で不確実性にスピード対応する企業文化を手に入れた。そしてDXで満足するのではなく、このスピードを落とすことなく次のアクセラレートに挑んでいくという熱を感じた。

奥谷 そこで欧米と日本企業の差がまたつきそうだなと感じる。DXが前提になっていない企業がまだ多いから。

 次のアクセラレートする要素としてサステナビリティとメタバースが挙げられていた。その話の前にリテールテイメント/リテールメディアの動向から議論したい。コロナ禍で在宅時間が増えて家庭のテクノロジーはレベルアップした。

在宅時間が増え、家庭のテクノロジーはレベルアップ

奥谷 テクノロジーに向き合う時間が増えて、受容度もアップしている。

 ショッピングジャーニーがデジタル化することで、店舗で待っているだけでは、どんどん接点が失われていく。そこで重要になってくるのがリテールテイメント/リテールメディアということになる。

奥谷 まさに顧客時間として検討、購入のプロセスの中でカスタマージャーニーを設計しなければならない。

 米ではデジタルのワクワク感を店舗にも引き継ぐためにはまるでお祭りのような体験を準備するケースもある。そこまでしないとわざわざ店舗にくる意味を見い出せず、デジタルに流れるという恐怖があるのだろう。

奥谷 コロナ禍前にもお祭り騒ぎのリテールテイメントはあった。行き過ぎの感もあるが。総論としてコロナ禍を経て、リアルの価値が再考され、重要性が増しているので、仕方ない面はある。リテールメディアについては、コンテンツマーケティングの進化系として、オウンドメディア、オウンドコンテンツをどう提供するかが課題になる。ブランド系小売業と量を売るGMS系では対応も異なる。

 チラシの延長上にあるメディアなのか、CRMの延長上にあるメディアなのかで変わるのでリテールメディアで括るのも危険かもしれない。収益のためのチャレンジより、顧客理解を進めるためのチャレンジとして取り組むべきだろう。

奥谷 メディアをやめる企業もあって、コストなど考えれば仕方ない面もある。モノ以外に語れるコトを放棄しない方がいいと考えている。

日本企業はパーパスドリブンへの対応が遅れている

 良いことをしている企業から買いたいというニーズは高まっているようだ。NRFでは2020年の調査で消費者の購入動機はパーパスドリブンが40%、バリュードリブンが41%と均衡していたが、22年にはパーパスドリブンが44%、バリュードリブンが37%と逆転している。SDGsが言われる中で消費者はいろいろな情報を得て意識が変化している。

The rise of the purpose-driden consumer

奥谷 日本だけをとればパーパスドリブンはまだ少ないだろう。企業は努力していないか、しているつもりになっている。しているつもりではダメな時代になっている。これから出てくるD2Cブランドや企業はそこを理解して、ものづくりや消費者に向き合っていくだろう。メーカーも小売業も異業態との競争が激しくなるということに気づくべきだ。

 若い層はパーパスドリブンが高い傾向があるので、これからのブランディングだとかものの作り方に加えて情報の伝え方を工夫しないとグローバルでは絶対に勝てない。

奥谷 サプライチェーンもパーパスドリブンや情報とモノが実際に動いて、店頭で買ってもらう。その一連の流れで説明責任を果たす。モノの流れと情報の流れを一致させるときにトレーサビリティが大事になり、デジタルがなければそれはできない。「マーケティング・イン・デジタルワールド」と言われるが、何を伝えるか、どのようにモノを作るか、という点が重要にある。日本のメーカーは、その伝え方がまだまだだと感じる。

世代交代が進み小売もメタバースのウエートが高まる

 メタバースで言語の課題はあるにせよ、世界は狭くなった。10代のFacebookのアカウント保有率は2012年が94%だったのに、2021年には27%となっている。もはやFacebookは親の世代が過ごす場所で、10代はクールじゃないと思っている。SNSからメタバースへの移行は始まっており、若い世代ほどメタバースに参加したいと思っている。10年後には確実に購買層になるので、そこに高いメディア効果がある。また、アバターで過ごした経験がリアルの行動にも影響する。

奥谷 アバターが履いている靴が評判なら、リアルで作ってみようかという話にもなる。コミュニケーションが成り立っているので、あえてCMしなくても済む。

 アバターが身に着けているブランドを、リアルでも欲しいな、という気持ちが出てくる。そこに可能性がある。メタバースのコミュニケーションは広がるだろうし、個人的にも知っておく必要があると感じている。

奥谷 オンラインでも学生と顔を合わすのは自己紹介の時くらい。あとは顔を出さずに勝手にコミュニケーションしている。オンラインゲームも同様だし、それを受け入れていくことも大事だろう。オンライン世界の人種も国籍も障碍の有無もないフラット感が、個人をアクティベートしていくという効果もありそうだ。そこに早くから手を打たないとショップ、バイにつながらない。

 メタバースは意外に近くにある。アバターを作って好きな服を着せて、他人を呼んでという世界を子供たちはすでに作っている。ゲームからコミュニケーションの世界に入って、枠組みを広げてゲームではない世界に広がっている。

※このレポートは講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです

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