データが導いた新たなニーズ 老舗メーカーのみりん大ヒットの理由
データ分析で見えた消費者のリアルな声
「こはくの実り」のヒットにつながったのは、データ分析ツールを活用し、消費者が求めているニーズを掘り起こせたことが大きいという。使ったのは、LINEヤフー(東京都/出澤剛社長CEO)が提供するデスクリサーチツール「DS.INSIGHT」だ。大手ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」の月間ログインユーザーID数5560万人(24年3月末時点)のデータを基にした国内最大級のビッグデータを基に、誰でも手軽に消費者のニーズを検索、分析できるのを強みとする。
機能の一つとしては、たとえばユーザーが興味を持った調べたい単語をツール上で打ち込む。すると、Yahoo!JAPANのユーザービッグデータをもとに、その単語を調べた人々が日頃どのような検索活動を行っているのかが分かる。そのキーワードと一緒に検索したキーワードをプロットした「共起キーワード」のマップなどがつくり出される仕組みだ。

今回のケースでは、まずツール上で「みりん」と検索した人々の検索行動を調べた。AI機能の「隠れたニーズを調べる」も使ったところ、「子供」「離乳食」「無添加」「いつから」といったキーワードが登場。そこから安全・安心な食品に対する子育て世帯のニーズを把握できたという。
さらに、みりんを検索している人の年代や、前後で検索しているワードを分析すると、みりんを使ったレシピや無添加商品のサイトを調べていることも判明した。商品開発のペルソナに、前述した「30代後半の健康志向の子育て世帯」を設定。健康志向の消費者が関心を持つと考え「玄米」を使うことにした。通常、本みりんは精米したもち米を使用するため、玄米の状態から商品を開発するのは困難を極めたが、試行錯誤を重ねて完成にこぎつけたという。
商品をPRするための販売手法も、データからヒントを得た。DS.INSIGHTで検索すると、離乳食や子供向けの食事にみりんを使用したいニーズがあり、アルコールの飛ばし方や、調理方法を検索している消費者が多かった。そこで、直売店「石川八郎治商店」(愛知県碧南市)で販売する際には、アルコールを飛ばしたみりんを試飲できるようにした。インフルエンサーに商品PRを依頼する際も、ペルソナに沿ったインフルエンサーを正確に選定できたことで、SNS経由で実際の購買にもつながったという。

清水氏は「思い込みや過去の前例だけにとらわれて商品を開発するのではなく、データ分析によって実際の消費者の声を知り、取り入れられたことが大きかった」と振り返る。当初は、検索結果の上位キーワードに「(みりんの)代用品・代替品」が登場したことでショックを受けた。それでも「みりんがなくてもどうにか料理できないかと思っている消費者が一定数いる。データによって現実を突きつけられたことで、どうすればみりんを購入して使ってもらえるのか、真剣に商品開発に打ち込めた」という。






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