「焼いて並べる」だけじゃない! 東急ストアに聞いた、出来立てパンを最適な時間に提供する方法
食品スーパーのベーカリーコーナーには、朝から次々と焼きたてのパンが並ぶ。焼きたてパンはお客にとって大きな魅力だ。しかしこうした商品を提供するためには、前日からの仕込みや時間帯ごとの需要を見極めた計画が欠かせない。ただ焼き上げて売場に並べるだけではなく、”最もおいしい状態”で提供するための工夫が施されているのだ。実際にインストアベーカリーの現場ではどのようなオペレーションが敷かれているのか。東急ストア(東京都/大堀左千夫社長)のデリカ食品部デリカ食品バイヤーの福島俊之氏に話を聞いた。

時間帯別の焼成で売上を最大化
東急ストアでは、1日3つの時間帯(午前2回・午後1回)に分けて、時間帯別の製造計画に基づきパンを焼き上げる。店舗の規模に応じて取り扱うSKU数は異なり、小規模な店舗では約16SKU、大規模な店舗では約60SKUのパンを扱う。
午前中は手軽に食べられる菓子パンや総菜パン、昼の時間帯にはバーガーやカツサンド、総菜パンがよく売れるという。「時間帯によって客層は変わる。とくに夕方は翌朝の朝食用にパンを購入する通勤客層の買物が多く、夕刻に向け、食パンやバターロールなどの食事パンを製造する」と福島氏は話す。
曜日別の傾向では、金曜日の売上が最も高くなる。これは、土曜日の朝に朝食を調理する手間を省く目的で、前日の金曜日のうちにパンを買い求める消費者が多いためだ。次いで、週明け月曜日の売上が好調だという。
東急ストアの製造計画は約2週間前から立案されるが、直近の売上データをもとに、当日の製造量を柔軟に調整している。こうして販売動向を分析しながら、店舗ごとの需要に応じた焼成スケジュールを組むことで、廃棄ロスを抑えつつ、売り逃しのない製造・販売体制を整えている。
朝一番に焼き上げるパンは?

パンの製造は、時間帯ごとの需要に応じて計画的に進められる。
まず、開店前に店舗で製造されるのは、工程が比較的少なく、すぐに提供できるクリームパンなどの菓子パンだ。朝・昼食需要に加えておやつ感覚で食べられる商品で、これには「ドゥコンディショナー」と呼ばれる生地の解凍から発酵までを担う機械が活用されている。
この機械は、前日に生地をセットしておけば、決められた時間に発酵され、スタッフが早朝から出勤しなくても、出勤後すぐに焼成が可能となり、開店にあわせて焼きたてのパンを並べられる。
続いて、昼食需要に合わせて、バーガーやカツサンド、ピザなどの調理パンを製造する。「11時半には売場に商品が揃っている状態を目標にしている」と福島氏は話す。
さらに、午後の製造では、夕方の販売と翌朝の朝食需要を見越して、再び食パンやバターロールなどを製造する体制を整えている。このようにして、時間帯によって商品ごとの焼成タイミングを調整することで、常に焼きたてに近い状態の商品を提供している。