セコマ・赤尾洋昭社長が語る、競争環境に左右されない”独自路線”の引き方

聞き手:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集長)
構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)
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人口減少や過疎化が進んでいる北海道。厳しい事業環境下、コンビニエンスストア(CVS)「セイコーマート」を運営するセコマ(北海道/赤尾洋昭社長)は、地域に密着した独自の商品やサービスを追求して固定客をつかんできた。

大手CVS各社が新たな施策を打ち出し今後の方向性を模索するなか、セコマはどのような店舗運営をめざすのか。赤尾社長に聞いた。

値上げ商品増加も販売数量は維持

──2024年度の業績と事業環境をどのように振り返りますか。

赤尾  24年度の売上高伸び率は2%台でした。22年度の好業績をさらに上回った23年度からの反動もあり、利益面では減益になりましたが予算は超えました。

 事業環境に関しては、人口減少が大きな経営課題です。それに加えて直近では、人件費の上昇、原材料価格の高騰も止まらない中で、店舗経営を維持するための原資をいかに確保するか、経営判断が求められています。そうしたなか、24年度は多くの商品で価格改定を行いました。

セイコーマート外観
大手CVS各社が新たな施策を打ち出し今後の方向性を模索するなか、セコマはどのような店舗運営をめざすのか

──価格改定に伴う売上面への影響や、利用客からの反応はどうでしたか。

赤尾  幸い、価格改定後も販売数量は概ね前年並みを維持しています。価格改定に際しては、量目は減らさず、原則、値上げ前1週間と値上げ後2週間わたり、店頭POPでその旨をお客さまに伝えました。お客さまからは「高くなった」との声はありますが、SNSなどでは「きちんと告知した上で値上げするのはよいことだ」といった好意的な反応も見られました。

 われわれはリピート客が多いので、お客さまと正直にコミュニケーションすることを重視しています。価格改定にあたっても、そうした姿勢により、値上げはある程度ご理解いただけていると感じています。

──インフレが長引く中、消費環境も厳しさを増しています。直近の利用動向に変化はみられますか。

赤尾  前提として、CVSという業態そのものが成長期から成熟期へ移行するにつれて、北海道ではチェーンのすみ分けが進んだように思います。大まかに、ナショナルチェーンを主に使う層が5割、セイコーマートを主に利用していただく層が3割、ブランドあるいは業態にこだわらないそれ以外の層が2割といったイメージです。セイコーマートは以前よりも固定客化が進み、商圏内に類似業種他社が出店しても、さほど大きな影響は受けなくなってきました。

 その背景の1つに挙げられるのは、セイコーマートの店舗を頻繁に利用し、新商品が出るたびにSNSを見て購入される、あるいは積極的にSNSで発信されるファンのお客さまが増えたことです。前述のようなお客さまとの“正直なコミュニケーション”を続けてきたことが、結果としてお客さまのロイヤルティ向上につながったのだと思います。

 お客さまは店を選ぶ際に必ずしも「安さ」だけを求めているわけではありません。そこでわれわれは、独自性のある商品・サービスの提供を通じて、買物を楽しんでもらえるような店づくりを続けていきたいと思っています。

「ホットシェフ」で寿司の提供も検討

──その独自性の高い商品づくりは、“セコマファン”を増やすうえでの大きな武器になっています。直近の商品開発で注力しているカテゴリーは何ですか。

赤尾  北海道産の食材を生かしたプライベートブランド(PB)の開発に注力しています。最近では、北海道産韃靼そばの実を使用した「Secoma 北海道韃靼そば茶」や、希少な「十勝ワイン山幸」を使った「Secoma 十勝ワイン『山幸』のワインサワー」が想定以上のヒットとなりました。私自身、北海道にはまだまだ知られていない食材がたくさんあると考えています。これからも、北海道の魅力ある食材を探し求め、商品開発に生かしていきます。

──そのためには産地や生産者の継続的な開拓もカギになりますね。

赤尾  セコマではこれまでも、バイヤーと開発担当者が各地域の農協や漁協などの生産者を直接訪問して情報収集するほか、自治体からの紹介など、さまざまなご縁によって、道内の生産者を地道に開拓してきました。

 同業他社に比べれば店舗数も少ないので、最初は小ロットでも商品化できるのがわれわれの強みです。たとえば、当麻町の名産品「でんすけすいか」の果汁を使った季節限定のアイスバー「Secoma 北海道当麻町産でんすけすいかバー」は21年に旭川地区を中心に約100店で限定発売したところ好評を博し、その後も段階的に生産数量を増やして今では全店に展開する夏の人気商品となっています。こうしたPBは、本州でも販売を拡大しようと食品スーパーを中心に取り扱いを増やしています。売上も毎年10億円前後増えていますね。牛乳が一番多く、ほかはワインやアイスを販売しています。

──セイコーマートといえば、店内調理総菜「ホットシェフ」がそれ単体で集客装置になる人気商品となっています。足下ではどのような方針で開発を進めていますか。

赤尾  ホットシェフは、通年で販売する「既存品」は味を継続的に見直し、季節限定で販売する商品は毎年リニューアルしています。また、昨今は生地の発酵から店内で行う

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聞き手

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集長

1987年石川県生まれ・東京都育ち。上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。編集記者、副編集長を経て25年4月より雑誌ダイヤモンド・チェーンストアおよびダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長。

これまで、企業特集(トライアルカンパニー、大創産業、クスリのアオキ、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。趣味は無計画な旅行とサウナ。最近は年齢相応(?)にランニングにハマり、フルマラソンも完走。

構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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