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インフレでもセリアが「100円を貫く」驚きの戦略とは

国内に2000店舗超を展開する、業界2番手のセリア(岐阜県)。同社は、同業他社が価格帯の幅を広げつつあるのに対し、「100円」という売価にこだわった事業戦略を貫いている。経営コストが高騰するなか、いかにそれを可能にしているのか。また、今後の成長戦略の道筋をどう立てているのか。河合映治社長に聞いた。

「100円特化」の優位性が顕著に

──まずは、100円ショップ業界を取り巻く事業環境をどのようにみていますか。

河合映治(かわい・えいじ) ●1990年同志社大学を卒業後、大垣共立銀行に入行。2003年5月、セリアに入社、同年6月から常務取締役。14年6月より現職。

河合 業界全体を見渡すと、売価を100円超に広げる動きが目立っています。われわれの試算では、その規模は売上の約2割相当に上っているとみています。

 対してセリアでは一貫して100円という売価にこだわっており、われわれにとってはある意味、その恩恵を享受しているともいえる状況です。

 つまり、競合他社が価格帯の幅を広げて結果的に100円の商品のアイテム数を減らすなか、セリアではこれまでどおりすべての商品が100円で買える。価格優位性が以前より高くなったことで、お客さまからセリアが優先的に“選ばれる”ことが増えたように感じています。

──実際に、直近の月次売上高をみると、2024年4月から8月までの既存店売上高は4.9%増と好調に推移しています。

河合 月次ベースでは23年11月ごろから好調に推移しています。コロナの巣ごもり需要の反動減が収束して客数が増加し、これに伴って既存店売上高が伸びてきました。

 商品カテゴリーごとに分析すると、従来強みだったキャラクターグッズや「推し活」関連グッズだけでなく、23年秋以降は全カテゴリーがバランスよく売れるようになってきました。

 とくに、他社との競合度合いが高い日用消耗品の売上も伸びており、100円を維持していることの優位性が顕著になってきていると感じています。

──とはいえ、コスト高騰やインフレ、円安といった厳しい環境のもとで、100円という売価を維持することは容易ではありません。それでも100円にこだわる理由はなんでしょうか。

河合 価格帯を広げると「商売」が複雑化して難しくなると考えているからです。競争市場においては、価格を上げれば販売個数が減少するため、粗利率が必ずしもそれに比例するわけではありません。また、商品を高付加価値化することで、100円ショップに単機能のシンプルな商品を求めるニーズに対してオーバースペックになる恐れもあります。商品開発の精度を維持することも難しくなるでしょう。

同業他社が価格帯の幅を広げつつあるのに対し、「100円」という売価にこだわった事業戦略を貫いている

──それを実現するためには、開発から製造、店舗オペレーションに至るまで、緻密なコストコントロールが欠かせません。

河合 そこで大きな武器になっているのが、

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