ほとんどのスーパーが知らないプロセスセンター本当の価値とは?

取材・文==森本守人(サテライトスコープ)、太田美和子、松岡由紀子、「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部
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プロセスセンター大

この10年間、国内スーパーマーケット(SM)では、プロセスセンター(PC)開設の動きが広がった。にもかかわらず、それが商品価値の革新につながった例は、まだ少ない。チェーン・システムにおけるPC本来の意義を見直し、新しい商品の実現手段としてPCの真価を示せ。

まだSMはPCの真価を理解できていない

 近頃、日本のSM業界では、店内の商品加工や準備業務をセンターに移行する動きが活発だ。これにサプライヤーから仕入れるアウトパック製品を加えると、生鮮・総菜・ベーカリーの各部門の品揃えは、一昔前と比べて様変わりしているように錯覚しやすい。

 しかし、実際にはPCが新しい商品開発の道具として活用される事例はまだ少ない。PCでなければ生み出せない価値ある商品を客に提案する努力は、不思議なほど、SMチェーンの人々の話題にもなっていないのが現状である。

 そもそも、最近SMがPC化を進めてきたのは、商品の革新とは別の理由からである。その理由は、次の3つの環境変化に対応することだった。

 第一に、店舗段階の作業要員確保がますます難しくなってきた。限りある労働力の有効活用には、作業現場を集中させるほうがよいという考えが広まった。

 第二にこれと関連し、外国人労働者の採用が拡大・普及した。細やかな作業を、夜間早朝の時間帯でさえも請け負う安価で扱いやすい労働力として、SM企業では、外国人労働者をPCに大量配置するやり方が一般化した。

 第三に、出店立地がますます見つけにくくなっている。現在、日本の年商50億円以上SM企業の平均売場面積は412坪(日本リテイリングセンター「ビッグストア統計」2021年版)で、多店化勢力においては600坪超と、競争優位を得るうえで必要な面積が拡大している。店内加工を前提に、店舗面積の4~6割を後方に割り当てる計画だと、新店候補地はいっそう限られてしまう。

 これらの環境から、PCを軸とした商品供給体制の構築を図るSMが増えた。以前は、店内加工を絶対視していた企業でさえも、いくつもが方針転換を宣言し、他企業も焦って検討を始める、という流れにある。

 ここではこのPC化の動きが、労働力や出店候補地といった外的要因に端を発している点を、強調しておかなければならない。つまり、自社の商品を進化させるための手段として、SMがPCの活用を始めた状況には、まだないのである。

センターが実現する業務集中化と新しい価値

 そもそも、チェーン経営の商品供給のしくみにおいて、センターには2つの大事な機能がある。1つは業務の集中化。もう1つは、

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