マルエツ・カスミの共同物流センター稼働!持続可能な物流モデルの姿とは

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア)
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U.S.M.H 八千代グロサリーセンター
画像はオープン開設当時のニュースリリースより

※本記事はダイヤモンド・チェーンストア3月1日号別冊「流通テクノロジー」の一部記事を再編集したものです。文中の所属・肩書等は発行時点のものです。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長:以下、U.S.M.H)は2023年9月、千葉県八千代市に新たな物流拠点「U.S.M.H八千代グロサリーセンター」(以下、八千代グロサリーセンター)を稼働した。

同施設は共同配送や省人化マテハン導入によって、持続可能な物流の新たなモデルづくりを進めている。

マルエツ・カスミの共同物流センターが始動

 U.S.M.Hは23年9月、「カスミ佐倉センター」とマルエツの「八潮常温物流センター」カバー店舗のうち、主に千葉エリア店舗のグロサリー機能を統合するかたちで八千代グロサリーセンターを稼働した。同センターは、24時間体制で千葉県のマルエツ35店舗とカスミ39店舗に向けて商品を供給している。

 センターの運営は、食品卸の国分首都圏(東京都/南博貴社長)に業務委託し、それをU.S.M.Hの商品戦略本部物流企画部が統率するかたちで行われている。

 八千代グロサリーセンター設立の目的は物流の最適化と持続可能な物流体制の構築だ。ドライバー不足に加え、24年度からの働き方改革関連法施行に伴う「物流の2024年問題」によって、労働需給は逼迫している。

 こうした状況下、U.S.M.Hはマルエツとカスミの共同物流センターを立ち上げ、各社独自の物流方式を採用していた2社のセンター運営方法を見直し、効率的な物流体制を実現しようと考えたのだ。

 共同物流センター設立の背景には、17年にU.S.M.Hが立ち上げた物流の効率化や技術革新をテーマとした勉強会「ロジラボ」での議論がある。ロジラボでは大手有名企業やベンチャー企業などさまざまな業界の専門家を招き、U.S.M.Hの経営層を交えて物流課題に関する議論を進めてきた。

 そこで得られたさまざまな知見を実装する場として「八千代グロサリーセンター」を設立し、グループ全体のモデル施設として運用を開始した。

 「初めは課題ばかりで苦労が絶えなかった」。同センターの立ち上げを「ロジラボ」開催を含めて一手に担った、U.S.M.H商品戦略本部物流企画部長の鈴木惣一郎氏は苦笑しつつ、こう振り返る。

 課題のひとつとして浮上したのが商品コードの統一だ。鈴木氏は「マルエツとカスミはそれぞれ異なる商品コードを活用したシステムを使っていたが、長年運用してきたシステムの変更を各社に求めることは難しいと判断した」と説明する。そこで開発したのがJANコード変換システムだ。

鈴木惣一郎氏
U.S.M.H商品戦略本部物流企画部長 鈴木惣一郎氏

 このシステムは、マルエツ・カスミの基幹システムからU.S.M.Hの基幹システムを経由して八千代グロサリーセンターに商品コード情報を送信すると、自動的にJANコードに変換するというもの。

 さらに、各社の基幹システムに納品情報などの情報を送る際には、それぞれのコード形式に再変換する仕組みも搭載している。

 これにより、各社が自社の商品コードを利用して従来の業務フローを維持しつつ、商品コードの統一が可能になった。今後は、このU.S.M.H基幹システムを基盤として、物流全体の最適化を図るためのデータ管理・運用をする物流DXの取り組みを進め、センターオペレーションの最適化を進めていく。

 次に課題として持ち上がったのは在庫問題だ。センターの設計当初、在庫日数の目標値は7日と設定していたが、実際に稼働してみると回転日数は12~13日程度と目標数値を大幅に上回って推移する状況が続いた。

 加えて、倉庫での取扱商品数はセンター稼働当初の計画では、8500SKUを計画していたが、実際には1万1000SKUを超えるSKU数となった。それに伴って在庫保管スペースが不足し、作業効率が大きく低下する要因となっていた。

 こうした問題を解決するため、センターでの出荷データや在庫データを細かく分析。関係部署と協議を進めている。

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記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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