「画期的なことより正しいことを」 水使用量99%削減したユニクロのジーンズ開発者に聞く
難しいのは、技術より意識の共有
サステナブルなものづくりを実現するにあたり、最も難しいのはどういうことなのだろうか。
「一番難しいのは、なぜ水を削減するのか、とか、なぜ無駄を省くのか、という意識を、社内外含めて共有することです。ジーンズの業界、ものづくりの世界は、手をかければかけるほど良いという考え方があります。かつては僕もそう考えてやってきましたし、今でもそういう面もあると思います。だから、いかに手をかけずに良いものを作るかという考え方を共通で持つということは、簡単にはいきませんでした」(松原氏)
長い付き合いのパートナー工場であれば、まずトップに自分たちのやりたいことを理解してもらってミッションを共有する。同時に、現場にも入って皆と一緒に作業もする。松原氏は長年ファクトリーブランドにいたので、現場とのコミュニケーションはやりやすかった。ただ、それでも「水の削減もわかるけれど、そうは言っても……」という声も聞こえてきたという。
ジーンズはかっこよくなければいけない
「それを解決する方法は、最終的にはやはり、今までよりかっこいいものを作って見せる、それしかないと思っています。やはりジーンズはかっこよくなければいけないですから。いくら水を削減した、サステナブルだ、といっても、かっこよくないものを見せたところで、作る人も着る人も、誰も納得しません。その方法でちゃんといいかっこいいものを作って、それをみんなに見せて納得してもらうしかないんです」(松原氏)
「自分はジーンズが好きで、ジーンズしかやってきていない。だから、もっとたくさんの人にジーンズをはいてもらいたいと思っています。たくさんのお客様に同じクオリティのものを提供したいと考えると、絶対に無駄をなくした方がいいし、少ない工程で作った方が品質も安定します。けっして画期的なことではないですが、単純に、それが正しいと思ってやっています」(松原氏)
松原氏の入社がなければ、ユニクロのジーンズイノベーションセンターは構想に終わっていたのかもしれない。そう思ってしまうほど、松原氏の存在感は大きい。しかし、本人はいたって謙虚に「これは僕たちだけでやったことではない」「それもパートナー企業や工場があってできたこと」という言葉を繰り返す。こういう形のリーダーシップこそが、新しいスタンダードを生み出していくのだと思う。
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