進化するファミリーマートのアプリ ブランド専用ページ導入から1年の効果は?

北野 裕子 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

近年、リテールメディア事業に注力しているファミリーマート(東京都/細見研介社長)。これまで店舗へのデジタルサイネージの設置や自社アプリ「ファミペイ」のサービスなど、さまざまな施策を進めてきた。その中で、大きな成果が見られているのが2024年7月より導入した「ファミペイ」内のブランド専用ページだ。ブランドを展開するメーカーと連携してお客の購買行動をデータで蓄積、分析しながらマーケティング活動に生かしているという。導入から1年、着実に表れているというブランド専用ページの効果について担当者に話を聞いた。

ファミリーマートのアプリ「ファミペイ」

ブランド専用ページで販促活性化

 ファミリーマートは約5年前から、顧客接点を強化する施策の1つである「カスタマーリンクプラットフォーム」の構築に向け、デジタル施策を推進してきた。その最たる例が他社に先駆けて取り組んできたデジタルサイネージ「FamilyMartVision(ファミリーマートビジョン)」の設置や、自社アプリ「ファミペイ」だ。リアル店舗だけでなく、デジタルサイネージやファミペイなどのデジタルの領域においても、顧客との関係性深化を図っている。

 そのうち、新サービスを始めるなどとくに注力しているのがファミペイだ。ファミペイは、20197月に始まったサービスで、商品購入時にアプリ上のバーコードをスキャンするとポイントが貯まるほか、決済サービス「FamiPay」も搭載する。期間限定クーポンの配信や自社のプライベートブランド「ファミマル」などの商品PRも実施しており、累計ダウンロード数は、258月末時点で2700万に上っている。

 ファミペイにおいて、同社が247月より始めた新しいサービスがブランド専用ページだ。ページの内容はメーカーが自由に作成することが可能で、情報発信やクイズ、ゲームのほか、アンケートなどさまざまなコンテンツを展開している。

ファミペイのブランド専用ページのうち、画像は「ハーゲンダッツ」

 ブランド専用ページには、ファミペイのトップページにある各メーカーのアイコンからアクセスできる。端的に言えば、ファミペイの中にさらにメーカーのアプリがあるようなイメージだ。259月時点で、ファミリーマートのプライベートブランド(PB)「ファミマル」のほか、「コカ・コーラ」「サントリーフーズ」「サントリー酒類」「アサヒビール」「ブリティッシュ・アメリカン・タバコ」「日本たばこ」「フィリップ モリス」「ハーゲンダッツ」の9つの専用ページが開設されている。

 各ページでは、それぞれ商品のPRやキャンペーン、クーポンの配布などを行っており、サントリーフーズでは、コーヒー飲料のブランド「CRAFT BOSS」やそのほかのブランドの新商品について動画を流すなどし、商品を紹介している。ポイントが還元されるキャンペーンや飲料の回数券販売など、アプリ利用者限定のサービスも展開する。

 デジタル事業本部デジタル事業部副部長の橋本ゆり子氏は「ファミリーマート、メーカーさま、お客さまと三者それぞれメリットがある。ファミリーマートにとってはアプリ、販促の活性化による送客、メーカーさまは情報発信、お客さまはお得な情報を受け取れる。三者のエコシステムになってほしいと考えている」と期待を込める。

アプリ通じお客の購買動向分析が可能に

 メーカー側にとって大きなメリットになるのが、アプリを通じて自社商品を購入したお客の購買動向を把握できる点だ。

 飲料を例にあげると、毎日同じメーカーの商品を買うお客もいれば、日によって異なるメーカーの商品を購入するお客もいる。そういった購買行動に加えて、商品の購入頻度や併買商品もデータとして蓄積されるので、メーカー側はデータを活用して販促を打ちたいお客のセグメントを絞り、効率的に販促を打てるというわけだ。

 とくに販促の中で重要なのがクーポンの配信だ。メーカーは継続して自社の商品を購入してくれるファンを増やしたいという思いが強い。アプリを通じて蓄積されたデータを分析することで、顧客の獲得、定着率の向上に向け、クーポンを配信する頻度や内容を絞り込めるという。

「ファミマル」のブランド専用ページ。飲料の回数券などお得なクーポンを配信している

 そのほか、ID連携機能も大きなポイントだ。メーカーは自社アプリやECサイト、他社の公式アカウントなどを通じて消費者の会員IDを保有している。IDがあれば会員への販促プロモーションは行えるが、商品を購入したお客の購買行動までは把握できない。そこでファミペイとメーカーが保持している会員IDを連携することで、購入頻度や併買商品など、自社商品を購入したお客の購買行動が定点観測できるため、メーカー側のマーケティング戦略に生かせるという。

 橋本氏は「メーカーさま側には、プロモーションを打ちたい、消費者を定点観測したいという要望がある。ID連携で“顧客動向の見える化”が可能になり、ファミリーマートでの買物だけではなくブランド全体の戦略に生かせると期待していただいている」という。

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記事執筆者

北野 裕子 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

兵庫県出身。新聞社を経てダイヤモンド・リテイルメディアに入社し、ダイヤモンド・チェーンストア編集部に所属。

趣味は国内の海や湖を巡り、風光明媚な場所を探すこと。おすすめのスポットは滋賀県の余呉湖、山口県の角島大橋。

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