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差別化?無印良品、製造小売型との両輪で強化中の「諸国良品」とは

無印良品ネットストア内で産地直送品を扱うサイト「諸国良品」は、スタートから10年目に入りブランドの再構築を進めています。7月からリアル店舗にも同名コーナーを導入し始め、各地域の「良品」を仕入れて展開しています。リアルの場で顧客接点を増やし、「諸国良品」の認知拡大を目指すものです。ライバルは産直品を扱う他の通販サイトでしょうか? むしろ手強いのは、売場を共有する「無印良品」そのものかもしれません。

無印良品の売場と融和しながら地域色を存分に打ち出す。写真は「無印良品 直江津」(新潟県直上越市)

諸国良品を知っていますか?

 「感じ良い暮らしと社会」に貢献することを企業理念とする良品計画が、その実現のための取り組みとして挙げるのが「あらゆる人の日常生活の基本を支える」ことや、「地域の活性化に貢献する」こと、「社会への良いインパクトを共創する」ことなどです。

 商品戦略に関していうと、「日常生活の基本を支える」ことは、製造小売型のブランドである無印良品のコンセプトそのものです。一方、諸国良品で扱う地域商品は、生活の基本商品であることに加え、地域の活性化・よいインパクトにも関わるものでしょう。また、24年度までの中計で達成したいこととして、「地域密着型の事業モデル」や「土着化」といった言葉もあり、諸国良品の事業はそれらにも関わってきそうです。

 諸国良品は、地域固有の商品を次代につなげることを事業目的と位置付け、各地の生産者と個別につながりを作り、取り扱い商品を増やしてきました。地域への密着や貢献を一段と重んじることから、諸国良品の担当部署は商品部系ではなく、事業を通じた地域活性化を役割とするソーシャルグッド事業部が担います。

 企業理念に根差した事業である諸国良品の課題はなにか? ソーシャルグッド事業部産直担当(諸国良品・ふるさと納税)の鈴木孝枝リーダーは、認知度を挙げます。「ネットストアだけでなく店舗がある強みを活かして認知を広げることがリブランディングの目的です」(鈴木氏)。

 確かにほかの産直サイトに比べ、 店舗を持つことは諸国良品の強みでしょう。ただ、強みの根本が却って諸国良品の存在をめだたせない要因になっているような気がします。ネットストアでも店舗でも、無印良品ブランドの存在の大きさが、諸国良品にとっての壁になっているように思うのです。

無印良品と融和する地域良品の売場づくり

 無印良品は広く認知されたブランドであり、利用客は店舗でもネットでも、製造小売で商品化された無印良品を求めて来店するのが当然です。産直品を買い求めるチャネルとしての認識が十分に育って来なかったのは無理からぬことと思うほど、無印良品ブランドは強力なコンテンツです。

 店頭で展開する諸国良品は、無印良品のなかに埋没しないほどの印象を放たなければなりません。「無印良品 銀座」(東京都中央区:銀座店)では、平台に陳列した青果の後背を諸国良品コーナーとし、食のゾーンを形成します。「無印良品 直江津」(新潟県直上越市:以下、直江津店)の諸国良品は、地酒コーナーと共に酒造関連のオブジェを使って世界観を演出しています。商品のなかには新潟・十日町市の飯用米を地元酒造が醸造した日本酒のように、地域に働きかけることで実現した商品もあります。

地域の良品を集めた世界観を売場で表現。写真は銀座店

 生産者の思いを伝える販売チャネルという趣旨は、直販サイトと同様です。売場の演出にも商品個々のPOPにも、生産者のストーリーを盛り込む工夫が見られます。

 諸国良品コーナーの導入店舗は8月末で9店舗、前述のような旗艦店・大型店から着手しています。産直生鮮を店頭に並べるには課題も多く、まずは加工食品から取り扱いを進めています。銀座店の場合、「北海道の良品」、「和歌山の良品」など全国各地の地域商品を入れ替わりで展開するそうです。直江津店では「新潟の良品」のほか「長野の良品」など隣接県を中心に構成しています。

 ネットとリアルの併用で諸国良品の認知が広がれば、生産者の売上も伸び、地域に及ぼすよいインパクトが強まるでしょう。良品計画にとっては、おもに食の領域で取り扱い商品の幅が広がるはずです。また、同社の出店戦略である地方展開を進める上では、諸国良品の品揃えが隣接する食品スーパーとの差別化要素にも相乗効果にもなるはずです。

 無印良品は製造小売の独自商品、諸国良品は産直主体の仕入れ商品と、それぞれの性質は異なります。しかし良品計画にとっては、どちらも同じ理念をシャフトにして回る商品戦略の二輪といえそうです。