トライアルが西友買収を完了 西友トップには楢木野仁司氏が就任

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)
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買収発表から4カ月――。国内流通業界の地図を塗り替える再編劇が、いよいよ次の局面に入る。トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアル)は7月1日、西友(東京都)の全株式を取得。7月2日に会見を開き、新たな経営体制と統合後の戦略方針を発表した。新体制でどのような成長戦略を描き直すのか。会見の内容を速報する。

⻄友の新社長には、トライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏(写真右)が就任。取締役副会長には西友の大久保恒夫前社長(同左)がそれぞれ就いた。

西友の新社⻑にトライアルカンパニーの楢⽊野仁司会長が就任

 スーパーセンター(SuC)を主力に全国で店舗展開するトライアルは、3月5日、西友の買収を発表した。単純合算で1兆2000億円を超える売上規模となることから、小売業界の勢力図を塗り替える動きとして注目を集めた。同じく西友買収に手を挙げていたとされる、イオン(千葉県)やパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都)が有力視されていたことも、“サプライズ”の度合いを高めた。

 西友は首都圏を中心に242店舗(25年2月末時点)を展開する。21年に筆頭株主がウォルマートから米投資ファンドのKKRに移り、大久保恒夫社長のもとで構造改革を推進。近年は北海道・九州の事業を他社へ売却し、本州の事業に集中しながら、収益性改善を図ってきた。

 一方、トライアルは生鮮強化の取り組みが奏功して近年各地で存在感を拡大、近年は北陸・四国など未進出地域への展開を加速している。

 こうしたなか、トライアルは7月1日、西友の全株式を取得した。買収総額は約3800億円。両社の売上高はトライアル(24年6月期)が7179億円、西友(24年12月期/本州事業速報値)が4835億円で、合算すると1兆2014億円。EBITDAは658億円、売上高EBITDA率は5.5%程度と見込まれ、国内小売市場において新たな巨大グループが誕生したことになる。

 そして⻄友の新社長には、トライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏が就任。西友の取締役会長にはトライアルの永田洋幸社長、取締役副会長には西友の大久保恒夫前社長がそれぞれ就いた。

左から西友の取締役副会長に就任した西友の大久保恒夫前社長、同社取締役会長に就任したトライアルの永田洋幸社長、同社新社長に就任したトライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏、同社執行役員経営企画本部長武田正樹氏。
左から西友の取締役副会長に就任した西友の大久保恒夫前社長、同社取締役会長に就任したトライアルの永田洋幸社長、同社新社長に就任したトライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏、同社執行役員経営企画本部長武田正樹氏

 新たに西友のかじ取り役となる楢⽊野氏は、学生時代にトライアルでプログラマーとしてアルバイト経験を積んだのち、1987年に電算部の部員としてトライアルカンパニーに入社。2006年に東日本ブロック長および関東・東北支店長を兼任。09年には取締役 販売本部長 兼 商品本部長として営業・商品領域の中核を担い、12年からは代表取締役社長としてグループの成長を牽引した。18年には代表取締役会長に就任。無人・省人化モデルの先駆けとなる「スマートストア」開発を主導し、23年からはトライアルの小型店舗事業を担うトライアルストアーズ(福岡県)の社長も兼任。デジタルと現場運営を融合させた小売改革に挑戦してきた。

新たに⻄友の新社長に就任したトライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏
新たに⻄友の新社長に就任したトライアルカンパニー会長の楢⽊野仁司氏

 会見で楢⽊野氏は「最大限のシナジー効果を引き出せるよう邁進したい」と話し、商品開発、物流、店舗運営の各領域で即実行に移す姿勢を明確にした。豊富な現場経験とITへの深い理解を併せ持つリーダーとして、再編後の西友の進化を担う。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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