ゼンショーがロッテリアを買収へ! 買収側と売却側、それぞれの思惑は

棚橋 慶次
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ゼンショーがロッテリアを買収するワケ

すき家

 一方のゼンショーホールディングスの設立は1982年。社名は「全部勝つ(全勝)」に由来する。

 「ゼンショー」という社名でピンとこなくても、牛丼の「すき家」といえば誰でも知っている。牛丼だけではない。「なか卯」「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」「はま寿司」「華屋与兵衛」と同社は多くの有力チェーンの運営を手がけており、最近は「ヤマグチスーパー」「フジマート」といったスーパーマーケットや有料老人ホームをはじめ介護ビジネスも展開。今期(2023年3月期)の売上高は7000億円を超える見通しだ。

 外食業態の横断的統合は、とくに食材調達面でのシナジー効果が大きい。調達ボリュームの増加とともにサプライヤーに対する発言権も増し、コスト面はもちろん、需給がひっ迫したときの優先仕入れにも有利に働く。たとえば、ハンバーガーの主役であるハンバーグについては、「ビッグボーイ」が主力商品とする以外にも、ファミレスチェーンの「ココス」でも取り扱っているため、調達における相乗効果が大きいとみられる。

 加えてゼンショーホールディングスは店舗運営のノウハウに長けているとされており、傘下に入ることで店舗オペレーションの効率化が期待できる。

2強とはコロナで明暗のロッテリア
買収が外食業界に与えるインパクトは?

 今回の買収対象であるロッテリアの創業は1972年。東京・日本橋の1号店よりスタートした。2009年には500店舗以上あった店数も現在は358店まで減り、日本マクドナルドホールディングス(2965店舗、2023年1月末時点)はもちろん、2位のモスフードサービス(1272店舗、同)にも大きく水をあけられている。

 業績面でも、19年3月期は当期純利益1億9100万円だったが、20年3月期には100万円に落ち込み、21年3月期には4億5000万円の当期純損失に転落。

 このロッテリアの状況は、日本マクドナルドホールディングスがコロナ禍でもデリバリー需要で好調、テイクアウト比率の高いモスフードサービスはむしろコロナ禍で大きく業績を伸ばしたのとは対照的だ。また、ロッテリアは利益剰余金のマイナス幅が毎期20億円前後で常態化しており、業績不振が続いていた。

 3社ともリアル店舗を起点にしながら、マクドナルド、モスバーガーと、ロッテリアでの売上を生み出す構造の違いなどが、業績ひいては事業成長の先行きに影響した格好だ。

 前述のように調達コストの低減や店舗オペレーションの効率化などは期待できるものの、ゼンショーの傘下に移ったからといって、現在の状況が大きくひっくり返るわけではない。

 それよりも筆者が注目したいのは、ゼンショーホールディングスが国内外食市場の覇権を握るのか、という点だ。ゼンショーホールディングスの連結売上高は、すでに日本マクドナルドホールディングスを大きく上回っている。

 「ゼンショーがここまでのし上がれたのは、志の大きさが違うから」

 ゼンショーを1代で築き上げた小川賢太郎氏は、かつてそのような発言をしている。異色の経営者としても知られる小川氏は。歯に衣着せぬ発言で物議も醸してきた。小川氏、ゼンショーホールディングスはどこまで突き進んでいくのか。ロッテリアの買収もゼンショーにとっては壮大な目標に向けた一里塚にすぎないのかもしれない。

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