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JMホールディングスが東京ローカルのスーパーみらべるを買収へ! そのねらいは?

ジャパンミートなどを展開するJMホールディングス(東京都/境正博社長)は1月23日、板橋区・北区・荒川区などにスーパーマーケット17店舗を展開するスーパーみらべる(東京都/関根朋之社長)を完全子会社化することを発表した。買収を通じてJMホールディングスは、東京都北部における販売基盤を強化すると同時に、販売手法や調達面でのシナジー効果発現を図る。本稿では、スーパーみらべるを傘下に収めるJMホールディングスのねらいを確認するとともに、JMホールディングスのポジショニングや戦略について考察してみたい。

異色のスーパーマーケット、スーパーみらべる

 少し古いデータになるが、全国スーパーマーケット協会によると、日本国内には大小合わせて987社ものスーパーが存在する。

 そのうち、庶民の台所を支える、いわゆる食品スーパー(売上高に占める食品の比率が8割以上)が全体の86.5%あり、店舗数10未満の地域住民でないと名前も知らないようなスーパーマーケット企業が全体の66.1%を占める。そうしたスーパーマーケットの中には、ユニークな経営で存在感を示している企業も多い。スーパーみらべるもその1つだ。

 品揃えや陳列方法、店の看板に至るまでスーパーみらべるは何もかもがユニークでSNSでも頻繁に話題になっている。

 スーパーみらべるの店舗を訪れると赤を基調とした鮮やかな看板でまず目に引く。看板には、伯爵夫人を模したロゴマークがあしらわれており、スーパーみらべるのシンボルにもなっている。

 店内に入ると、山のように積まれた目玉商品が視界に飛び込んでくる。「ドン・キホーテ」が行っていることでも有名な「圧縮陳列」である。品揃えもユニークだ。たとえば精肉売場では、一般的なスーパーマーケットには売られていない見慣れない部位が並んでいる。しかも、どれも値段が安い。

 こうした売場づくりを支えているのが、「個店主義」だ。「みらべるでは各店長が「経営者」として地域に密着した店づくりを行い、各店の売場担当者が『商人』として売場を経営する『個店主義』を、店舗運営の柱としています」(スーパーみらべる公式サイトより)。調達から販売までを店舗の裁量にゆだねる運営体制がスーパーみらべるのユニークさの源泉と言っていい。

急成長を続けるJMホールディングス

 一方、買収側のJMホールディングスは、売上高1408億円(2022年7月期)でスーパーマーケット業界の売上高ランキングでは25位前後のポジションにある。驚くべきはその成長スピードだ。同社はこの10年間で、売上を4倍以上に拡大している。CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は16.4%に達し、業界平均CAGR(2.1%)を大きく上回る。

 JMホールディングスの創業は1945年、茨城県行方市にて「丸八肉店」として食肉卸をスタートした。小売業への展開は1983年、ジャパンミートとして、もともと得意分野とする精肉を軸として、総菜・鮮魚・青果部門と守備範囲を拡げてきた。1店舗巨艦主義による巨大ホームセンターを展開するジョイフル本田(茨城県)の店内に出店し、圧倒的な低価格と集客力で業容を拡大してきた。

 部門拡大のバネとしてきたのがM&A(合併・買収)だ。2003年に黒田青果(水戸市)を、翌年には鮮魚の兼高(水戸市)を、さらにその翌年にはそうざい男しゃく(常陸大宮市)を買収したのも、精肉以外の部門強化が目的だ。もちろん祖業の強化にも余念がなく、2014年には食肉加工卸の霞南フードサービス(土浦市)を買収、のちに吸収合併している。

 M&Aは、店舗展開の原動力でもある。2013年には「肉のハナマサ」で知られる花正を買収、首都圏を中心に50近い店舗網を掌中に収めた。そして買収の4年後、JMホールディングスは1000億円超え企業の仲間入りを果たす。

 こうして拡大した店頭で、JMホールディングスは一般的なスーパーマーケットとは一味違った販売方法で商品を展開する。通常の3倍以上のフェースで単一商品を並べ、一挙に売りさばく「単品大量販売」などはその一例だ。もちろん、それらを可能にするたの、物流加工センターなど、インフラ整備にもぬかりない。

生き残りをかけたM&Aが過熱!

 スーパーマーケット業界では、M&Aが加速しており、直近1~2年を見ても経営統合や吸収合併、資本業務提携が相次いでいる。

 たとえば、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府)傘下の関西フードマーケットは23年4月付けで子会社のイズミヤと阪急オアシスを経営統合する。イオングループのフジ(愛媛県)とマックスバリュ西日本(広島県)は22年3月に持株会社制に移行、24年3月には合併して新会社になる予定だ。

 そのほか、双方とも新潟県で店舗展開するウオロクとマルイが、21年7月に資本業務提携を締結。千葉県市原市を拠点とするせんどうとヤオコー(埼玉県)が21年9月に資本業務提携を結んだのも記憶に新しい。

 業態の壁を越えたM&Aもさかんになっている。フード&ドラッグの流れに乗ってクスリのアオキホールディングス(石川県)が東北エリアのローカルスーパーを次々と買収し、業界を震撼させている。

 ここ数年は若干の拡大基調にあるスーパーマーケット市場だが、中長期的には少子高齢化の影響を逃れられない。スーパーマーケット各社は、M&Aを通じた配送・仕入れの効率化・ドミナント戦略の強化・調達交渉力の向上により競争力を高め、生き残りを図ろうとしている。

 JMホールディングスの戦略も、当然同じ文脈にある。ただし、同社のそれは他社よりも“好戦的”だ。同社が昨年策定した中期経営計画では、4年後の2025年7月期に売上高1800億円達成をめざすとしている。

 1800億円といえば、現状の約4割増にあたる。その成長戦略を支える柱が「新規出店攻勢」「既存店売上増」、そして「ともに成長をめざすパートナーの参画」、つまりM&Aだ。スーパーみらべるの買収は、JMホールディングスの成長戦略にどう影響してくるか。その行方に注目したい。