DHC買収へ、オリックスの思惑と化粧品業界に与えるインパクトは?

棚橋慶次
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どうなる? 買収後のDHC

 DHCを買収したオリックスにはどのような思惑があるのだろうか。

 オリックスのリリースによると、「長年の経験を有する大手化粧品・健康食品メーカーとして、長年の実績を有していること」「積極的なテレビでのPR活動や通信販売などを通じて、国内で高い知名度を有し、幅広い年齢層の方々に支持されていること」「直営店に加えて、コンビニエンスストアやドラッグストアなど通信販売以外の広範な販売チャネルを有していること」などを買収の理由に掲げている。

 確かに、化粧品におけるDHCの優位性はその通りだろう。問題は、DHCが培ってきた経営資源を生かし、さらなる成長につなげるだけの手腕がオリックスにあるかどうかという点だ。

 オリックスは医療機器販売(イノメディックス)や製薬業(同仁医薬化工)に出資しているが、事業内容を見るかぎりではDHCのビジネスとのシナジーはあまり期待できなそうだ。しかも、化粧品事業のマーケティング手法や流通チャネルとの商慣行(棚の確保・リベート制度・返品契約など)は独特であり、敷居は高い。

 だが、オリックスは過去におけるさまざま出資や買収を通じ、企業価値を向上させるノウハウには長けているはずだ。今回の買収手続きが落ち着いたのち、2023年3月には吉田会長兼社長も完全に経営から退き、オリックスサイドが新体制を敷くことになる。

 今後の読みとしては、オリックス主導のもとDHCはオーナー企業体質から経営体制を刷新し、企業価値を向上させたのちに、さらなる事業承継を果たす(同業他社との合併など)可能性も捨てきれない。

 「本件が当社の2023年3月期連結業績に与える影響は軽微です。」 

 プレスリリースでコメントされているように、売上高2兆5000億円超、営業利益3000億円超(ともに2022年3月期実績)という高い収益力を誇り、総資産は14兆円にもおよぶ。DHCの買収額は約3000億円と複数のメディアが報じているが、オリックスからすれ数あるM&Aの1つに過ぎないのかもしれない。

 今回の発表を受けてのマーケットの反応はまずまずだった。発表前のオリックス株価の10日終値は2066円、翌日は寄り付きから3%超の上昇を見せた。その後は11月末~12月初旬に2200円台となるなど、堅調に推移している。少なくとも投資家は今のところ好感しているようだ。

 他方、化粧品業界に与えるインパクトは、少なくとも「軽微」ではない。資生堂の国内売売上高が約2700億円、花王が約2300億円、コーセーが約1700億円といった規模感の中で、DHCの900億円の存在は大きい。

 とくに中低価格のスキンケアカテゴリーに関しては、DHCの商品は競合他社に引けを取らず、とくに長年の歴史を持つEC領域で大きな強みを発揮している。既存チャネルに遠慮して最近までECを控えてきた大手とは勢いが異なる。

 そんなDHCに対して、競合他社が関心を抱いたとしてもおかしくはない、むしろ自然だ。オリックスは当面DHCを手放す気はなさそうだが、総合金融業であるだけに中長期的にはわからない。この先も引き続き動向を注視したいところだ。

 

※記事を修正しました。「吉田嘉明」氏の名前が「田嘉明」氏となっておりました。大変失礼いたしました。

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