第103回 マーケティング2.0へ!SCは「神社の参道商売」と同じである理由
近年のDXブームもあり、「データを使って何かしなきゃ」と半ば脅迫観念にかられた上司から「DXを急げ」「もっとデータを使って効率的なことはできないか」と指示を受け、あれこれ思考を巡らし、施策を考えるショッピングセンター(SC)担当者たちがいる。とくに顧客データを分析し、顧客接点を増やし、顧客の囲い込みを行うことを年度のミッションとして取り組むケースも多く、中にはDX推進室やデータマーケティング部など専門組織を設置する企業もある。ただ、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)やワントゥワンマーケティングを実現しているSCをこれまで見たことがない。それは何故か、そして、この問題(テーマ)にSCがどのように取り組むべきか今回は考えていきたい。

SCの「カスタマージャーニーは不変」
前回マーケティングの変遷(1.0~5.0)を確認し、SC運営はいまだ1.0と2.0の段階にいることを指摘した。SC運営のマーケティング活動は、販促、接客ロープレなどのプッシュ型のプロモーション活動、新業態や初出店と製品志向なプロダクト発想、リニューアルという修繕やセールやバーゲンというコスト志向なコミュニケーションによる1.0と2.0のマーケティングそのものである。
では、それがいけないのかと言うとそうでもないと思っている。
なぜ、それを肯定するのか。それはこの連載でも何度か登場するSCカスタマージャーニー(図表1)に依拠しているからだ。
不動産事業であるSCは、来店客がいなければ始まらない。EC全盛の今、わざわざSCに来店するための理由は何か。そこに重要なポイントが隠されているが、来店した顧客はその時間をほかの時間、例えば、読書、睡眠、趣味などほかの予定に回すこともできたはずだ。
しかし、それらを犠牲にしてSCに来店する。来店には電車賃やガソリン代という目に見える支出もあれば、目に見えない「機会費用」という大きな支出を払う。これこそがマーケティングの4Cの一つ「カスタマー・コスト」に該当する。「顧客にとって時間やお金を費やす価値があるかどうか」ということだ。
では、どれほどの来店者数が必要となるのか。買い上げ率を考えると1日当たり数千人、数万人単位の数となり、その人達がテナントの売上に寄与し、SCは賃料を収受する。
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