ボックスで不要品を回収し再循環 各地で広がる「PASSTO」とは?
詳細なデータ管理で再循環を最適化
川野社長がPASSTOを始めたのは、「捨てる仕組みはあっても、再循環させるインフラがまだまだ足りない」という危機感からだ。環境省によると、衣類の年間廃棄量は48.5万t(22年時点)。ECOMMITでは現在、年間約1.3万tの衣類や雑貨を回収しているが、「廃棄量に対して回収のスピードが追い付いていない」(川野社長)と感じていたという。そこで、回収量を増やすために生活者の導線に回収ボックスを設置しようとPASSTOを考案した。
PASSTOを始めて2年あまり。川野社長は「最初はかなり苦戦したが、ようやく認知が広がって設置数も増えてきた」と振り返る。開始当初は、ゴミや危険物が混入するリスクや、ボックスの設置メリットがわかりづらく、なかなか導入が進まなかった。

そこで、データで裏付けすることで設置することのメリットを訴求していった。たとえば、一部の店舗でPASSTO利用者にアンケート調査を行ったところ、約43%が「回収ボックスを利用するために店舗に来た」と回答。このように、ボックスの設置は来店動機につながっていることなどをアピールしていったという。
クーポンの配布も効果があった。アパレルショップで持ち込んだ不要品の点数に応じて、その店で商品購入時に使えるクーポンを配布したところ、多くの利用があったという。「不要になった衣料品を手放すことでクローゼットにスペースができる。新しいものを購入しようという購買意欲の創出にもつながった」と川野社長は話す。
さらにPASSTOが強みとするのが、ECOMMITの「トレーサビリティデータ」だ。ECOMMITでは、回収拠点、回収日、アイテムごとにデータを登録。加えて選別後のリユース率、リサイクル率やトレンドといった詳細なデータも記録する。これにより、回収した不要品を再流通させる際のルート、方法を最適化できるほか、回収後の透明性の担保にもつながっている。
とくにアパレル企業はこのトレーサビリティデータを重視する。ECOMMITのデータを元に、リサイクルにつながったり、長く着てもらえたりする商品を見極め、商品開発の時点から参考にする企業もあるという。
高い循環率を維持するためには、回収した不要品をいかに最適なかたちでリユース、リサイクルしたかがカギになる。それには、サーキュラーセンターにいるプロピッカーの目利き力が欠かせない。この目利き力とこれまで培ってきた取引先とのマッチング力で、再流通率は98%、そのうち回収した衣類をそのままの形で販売するリユース率は85%にものぼるという(24年6~7月の期間)。
回収拠点数10倍超へ、新たなサービスも
ECOMMITが今後めざすのは、数年以内に回収拠点を現在の10倍にまで増やすことだ。「現状では、衣類の廃棄量の約1~2%しか回収できていない。2030年には25%を回収できるように、回収拠点数を広げていきたい」と川野社長は意気込む。

回収拠点を増やすため、新たなサービスも始めた。24年9月には、LINEヤフー(東京都)と協業し、期間・地域限定で不要品を宅配で回収する「宅配PASSTO」を行った。同社が運営する、サステナビリティに関連する情報発信のアカウントと連携すれば利用できる仕組みで、依頼すれば宅配業者が集荷に来る。実証では1カ月半で3500人以上が利用し、44tの回収につながった。好評だったため、25年3月から本格的に実施している。
これらの取り組みの下、事業は順調に拡大しており、25年9月期の売上高は対前期比150%超になる見込みだ。インフラ整備も強化し、25年4月に同社最大規模の物量を扱う「東京サーキュラーセンター」を開設。同時期に愛知県にも「中部サーキュラーセンター」を開設した。
事業を通じて、川野社長が一番に掲げるのは「行動変容」だ。「われわれの一番のライバルは捨てるという行為。PASSTOをはじめ、回収拠点やサービスを増やしていくことで、気軽に不要品を手放し、再循環させていく。捨てるのではなく、再循環させることが当たり前になるような行動変容につなげていきたい」と力を込めた。






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