グローバル視点で見る、食品SPAモデルの功罪と成功の要件とは

解説・文:櫻井 康彰(McKinsey and Company パートナー)、李 婧怡(mckinsey-and-company-アソシエイトパートナー)、佐藤 諒(McKinsey and Company エンゲージメントマネージャー)
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前回は「低価格戦略企業の衰退」を題材として、ねらうべき消費者の動向(ゼロ・コンシューマの増加)を取り上げ、新しい消費者像の勃興の中での低価格戦略企業の衰退のシナリオと、新しい価値提案の示唆(提供価値の再定義、ダイナミックな価格設定、顧客体験の強化)を論じた。

最後となる第4回では、多くの食品小売がSPA(製造小売)モデルへとかじを切る中で、グローバルのトレンドから見たときの「SPAモデルの限界」のシナリオに関して論じたい。

海外小売でもSPA化が加速

 ウォルマート(Walmart)、コストコ(Costco)、リドル(Lidl)など多くの大手食品小売企業が新しい自社工場の稼働を開始しており、食品小売企業のSPA化がグローバルで加速している。

 SPA化によってコスト効率向上が見込めるほか、プライベートブランド(PB)の差別化にも影響する新製品の開発や改良への迅速な対応が可能になることが、投資加速の主な理由だ。

リドル外観
ディスカウンターであるリドルは、トレンドの変移による味・フレーバーの変更が少なく、大量に消費が見込まれるカテゴリーで優先的にSPA化を選択している

 たとえば欧州のディスカウンターであるリドルは、トレンドの変移による味・フレーバーの変更が少なく、大量に消費が見込まれるカテゴリーで優先的にSPA化を選択している。それにより、一度に大量に調達・製造できるスケールメリットを生かした、コストメリットを実現している。

 こうした定番商品におけるSPAモデルの導入は、新規の設備仕様の変更頻度も抑えることができるため、効率的な資産活用にもつながる。加えて、新商品の導入など製造に関わる大きな変化が発生する際には、製造分野の知見を持った人材の採用、配置を行うことで初期段階から高水準の生産管理を可能にするなど、リスク対応も積極的に行っている。

北米の食品小売ではSPAモデルに「限界」も

 しかしながら、

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