日本でも「リテールメディア」という言葉が脚光を浴びるようになって久しい。投資余力がある大手小売を中心に取り組みが進む一方、特定の地域の中で小売とメーカー、広告代理店、そしてマスメディアまでが大同団結するというユニークな枠組みが誕生した。
それが、「九州リテールメディア連合会」(以下、KRF)だ。KRFの加盟企業が1月に実施した「勉強会」の模様をレポートしつつ、“ローカルリテールメディア”の可能性を考察する。
リテールメディアは“非競争領域”
KRFは2023年9月に、SalesPlus(東京都/大浦芳久社長)が実質的に幹事会社を担うかたちで設立された。同社は大手広告代理店の電通グループと、トライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長:以下、トライアル)傘下のRetail AI(東京都/永田洋幸社長)の合弁会社で、購買データをもとにしたマーケティングソリューションを提供する企業である。
KRFがめざすのは、リテールメディアを“非競争領域”として、関連施策の成果や課題を企業間で共有し、広告メディアとしての価値を最大化することだ。現在KRFに加盟する小売企業は、トライアルや西鉄ストア(福岡県/久保田等社長)など4社からなる。

目下、KRFが取り組んでいる施策は大きく3つ。①リテールメディアの連携、②リテールメディアの拡大、③リテールメディアによる収益化で、①から③を段階的に推進する計画だ。
①については、各企業が参加する「勉強会」などを通じたリテールメディアに関する情報や課題を共有。そして②ではKRFに参画する複数の小売チェーンを横断してリテールメディアのセールスパッケージを開発したうえで、販売実績を増やして③収益化を図るという流れだ。
設立からこれまでの約1年半の間は①~②の施策に注力し、店頭デジタルサイネージを中心にメーカーからの出稿実績を徐々に積み増してきた。25年度はサイネージのほか各企業のアプリへも出稿できるようにし、数値目標を定めたうえで出稿額をさらに増やしたい考えだ。
そのうえでKRFは将来的に、店頭やアプリだけではなく、テレビ・ラジオのCMや番組といったマス広告もリテールメディアの範囲ととらえて市場と出稿額の拡大をめざす。つまり店頭販促からアプリやウェブサイト、マス広告までをシームレスにつなげたリテールメディアを構築するというわけである。
その目標達成に向け、KRFには小売企業のほかにも、広告代理店や九州のローカル局の営業担当者なども参加している。
複数の媒体と複数の小売企業を横断した広告パッケージを、広告代理店やマスメディアも巻き込みながら開発することで、出稿主にとってより効果の高いプロモーションを実現する。これがKRFの最終的なゴールであり、KRFが考えるリテールメディアの「価値」である。
各チェーンの売場でサイネージCMを撮影
こうした壮大なプロジェクトの進捗を各社で共有する場となっているのが、
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