クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは
買収価格がこれよりも高まればクシュタールの増資観測がくすぶりますし、資金調達のスキームに優先株が含まれる可能性、あるいは株式交換などスキーム自体の変更もあるかもしれません。さらに、この件がまとまれば、2社ともに徹底した合理化に迫られることは不可避でしょう。
過去においてこの手の買収のあと、コストシナジーの最大化に力を注ぐ結果、本質的な体力が削がれてしまったケースがあとを立たないというのが筆者の認識です。本件は慎重に進めるべき案件と言えそうです。
それでも強い、手を組むべき「戦略的な合理性」
一方、本件には戦略的合理性が内包されています。
セブン&アイ側では事業の取捨選択が進んだ一方、国内コンビニエンスストア(以下、コンビニ)事業には飽和感が出ています。さらに成長ドライバーと期待される北米コンビニ事業では、既存店商品売上高が2023年第3四半期以降マイナスで推移し、特に既存店客数は2023年第2四半期以降マイナスです。商品荒利率が低下基調にあり、ガソリンについても2023年第2四半期以降1日1店当たり販売量が減少を続けています(以上、四半期ベース)。
日本の商品戦略の成功事例である「フードのPB化とアップセル」を米国で展開する期待が高いものの、これが定着するには一定の時間と規模が必要になることでしょう。ガソリン粗利は筆者の推計によれば依然として北米事業の収入源として重要な地位を占めていると思われるため、短期的には調達力の改善、長期的には自動車のハイブリッド化・EV化による需要減を見据えた対応を進める必要がありそうです。
クシュタールもセブン&アイと類似した事業環境におかれセブン&アイと似通った戦略を考えている模様です。営業利益が伸び悩んでいること、米国では既存店商品売上高がマイナスであること、米国のコンビニ業界の集約が進むなかでポジションを高める意向を持っている模様であること、フード・PBが鍵だと考えていることなど共通点が多いと思います。
セブン&アイのフード戦略が日本で成功した経験にクシュタールも注目していると考えられることから、両社が手を組むことにメリットが多いと考えられます。
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