円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは
円高修正の「負」の側面とは

しかし、円高は恩恵ばかりではありません。外需依存度が高い企業にはマイナス要因ももたらします。まずはインバウンド消費の恩恵が大きい百貨店株が下落しています。
次に、海外利益貢献が高い企業ほど、円貨に換算した利益額が円高によって目減りしてしまいます。
さらに、この円高への修正の底流にある海外景気動向も問題です。すでに海外で収益を上げている企業においては現地通貨ベースの収益に下方圧力がかかります。これから海外進出を本格化する企業においては、投資採算の確保が従来想定よりも厳しくなるため、その展開速度が制限されることでしょう。
例えばファーストリテイリング。海外ユニクロ事業は順調に増収増益を遂げていますが、日本に次ぐ主要販売地域である中国大陸に限れば、2024年8月期の下期(2024年3-8月期)は減収減益になると同社は説明しています(2024年7月11日付決算説明資料)。前年のハードルが高かったこともありますが、消費意欲の伸び悩みなどの外部要因が、立地・品揃え・マーケティングなどにわたる内部課題を浮き彫りしている状況にあり、広い中国においてエリアごとにしっかりニーズに応えていく経営の高度化を迫られています。
例えばニトリホールディングス。IR資料によれば、海外展開の柱となるべき中国において出店計画を期初と比較して下方修正しています(2024年8月7日付決算説明資料)。
例えば良品計画。中国大陸の直営既存店とオンラインストアの販売額は今年に入り1月から6月までいずれの月も前年同月を下回って推移しています(同社HPより)。
7月末から8月9日までの株価動向もこうした状況を懸念しているようです。ファーストリテイリング、セブン&アイ・ホールディングス、ゼンショーホールディングス、良品計画、FOOD & LIFE COMPANIES、サイゼリヤなどの株価はいずれも足元冴えない動きです。
「国内」展開力に再注目!
このように眺めていくと、円高への修正によって国内小売事業の伸び代が重要なテーマとして浮上してくると筆者は考えています。
例えば、ニトリホールディングス。国内店舗数は島忠を合わせて第1四半期末(2024年6月末)829店舗(うちニトリおよびニトリエクスプレス計558店舗)で、これを期末には884店舗まで増やす予定です。しかし、同社において注目すべきはむしろ品揃えの強化だと思います。電動家具、家電、アパレルなど、これまでの主力商品である家具の高付加価値化および家具と異なる買い替えサイクルの商品を推進し従来にも増して安定的な成長を目指していることがわかります。
そして筆者がもうひとつ注目している企業が良品計画です。
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