「階級の多様性」が生む小売チェーンの棲み分け
昨今、日本国内において欧州の小売企業への注目度が上がりつつある。
サステナビリティ領域での先進的な取り組みや、プライベートブランド(PB)商品の比率の高さなど、確かに参考にすべきところは多い。しかし、欧州市場は消費者の嗜好や購買行動、メーカーと小売の関係性など日本と大きく異なる点も多く、店舗や商品を表面的に見ただけでは、欧州小売企業の本質的な部分を理解することは難しい。
欧州の小売市場に学ぶうえでは、欧州における消費者の多様性を3つの観点から深く理解することが重要だ。そこで今回は、筆者が所属する欧州系コンサルティングファームのローランド・ベルガーのこれまでの知見も踏まえながら、「3つの多様性」について解説してきたい。
まず1つめは、所得や社会階層、つまりは「階級の多様性」である。
欧州では歴史的な経緯もあり、家柄や所得による階級の差が歴然としている国が多い。とくに所得の格差は1980年代以降、長期拡大傾向が続いている。なかでもイギリスはどの階級に属するかによって居住地域やライフスタイル、購買行動も大きく異なる。
この事実は、小売チェーンのすみ分けにもつながっている。たとえば、ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)やウェイトローズ(Waitrose)は富裕層の多い地域に出店する傾向が強く、セインズベリー(Sainsbury’s)は中所得層、テスコ(Tesco)、モリソンズ(Morrisons)などは低所得層が多い地域での出店が主である。
店舗における商品構成もそれに応じて大きく異なる。
健康志向が強い
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