セントリックソフトウェア株式会社
営業本部長日本事業責任者
橋永 重弘 氏
消費者ニーズや市場トレンドにスピ―ディーに対応していくためには、サプライチェーン全体の課題を解決していかなければなりません。経営戦略から商品の企画開発、素材の調達、商品供給計画、マーケティングや販売、価格調整に至るまで、一元化された情報を社内だけでなくサプライチェーン上の関係者と共有することで、特定の個人に依存することなく業務の連続性を確保することができます。本セミナーでは、商品企画開発情報の一元管理による属人性排除と業務の可視化、プレシーズンとインシーズンを見据えたローリング(回転)型の事業管理を支援する次世代型PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)をテーマに、小売業の競争力を高めるビジネスモデル創造に向けたアプローチについて考察するとともに最新事例をご紹介いただきました。
商品企画開発の情報を一元化し戦略・分析から量産・販売まで連携
セントリックソフトウェアは米カルフォルニア州のキャンベルに本社を置き、従業員は約800人。消費財、小売業向けPLMの領域で全世界1万2800以上のブランドが採用するなど、世界でNo.1 の導入実績を誇っている。コード開発が不要であり、ほぼ100%クラウド上の機能設定によりシステムが実装できるので短期間でシステム導入が可能であり、次世代型PLMとして、使いやすさや社内外のあらゆる部門のコラボレーション基盤として普及が進んできた。
セントリックPLMの特徴としては、複数の異なるカテゴリの製品に標準で対応できる仕様となっており、導入企業の規模も50人程度の小規模の小売店から全世界で展開するような大企業でも同じシステムで対応できる機能の豊富さと柔軟性にある。
そもそもPLMとは何か、セントリックとは何か、そして今回のテーマであるサプライチェーンの空白領域とはどのようなものなのか。商品企画はアイデアから始まり、商品設計・共同開発、そして製造原価を計算し、レシピや配合を決め、開発・検証、試作と評価のプロセスを重ね、最終的に商品仕様が確定する。この中には研究機関の様々なテストであったり、認証を取得する工程も含まれるケースもある。ただこれらの業務はかなりすり合わせを必要とするので、属人的になりやすく時間も要する。結果として、全体の進捗が見えず、情報の点在が様々な問題を引き起こしている。
量産プロセスにおける生産管理や品質管理などは、システムによるサポートが一般的だ。しかし、商品計画から仕様決定までは、Excelなどを使った属人的な作業で行われているのが実情なのだ。商品企画開発は過去の売上から経営計画やMD計画が作られて、それを反映して具体的な品揃え計画と商品開発業務が進んでいく。そして最終的な商品仕様が確定したうえで、発注、生産のサプライチェーンが走る。「計画、商品企画開発、サプライチェーン」と大きく3つの段階があるが、商品企画開発業務に関しては、Excelによる作業が中心となり、データの二重入力や何度も確認が必要とされ、情報検索に時間がかかるなど極めて非効率的なことが多い。
残念ながらこの領域がシステムでサポートされていないことで、前段としての機能がサプライチェーンとつながっていないため空白部分が生じている。このようなかたちで前工程の戦略・分析・予算計画から最終的な量産・物流・販売のサプライチェーンの分断部分にPLMが入ることで空白部分を埋めることが可能になる。
商品開発業務は、トレンドの分析や売れ筋商品の分析などから実際の商品企画、素材の検討から詳細仕様の管理、原価管理から調達まで、最終的には生産進捗情報管理の一部まで含まれる。セントリックPLMは、経営/MDとサプライチェーンをつなぐ重要な役割を果たすことができるのだ。
国内外の流通小売や消費財メーカーが相次ぎ導入し業務効率化に貢献
ドン・キホーテを運営するPPIH様は、自社開発品のモノづくりの基盤としてセントリックPLMを採用した。プレミアアンチエイジング様ではコスメ開発・商品化の基盤として採用。アシックス様では2016年から利用を開始し、全世界向けの競技用シューズ、一般用のシューズやアパレルの企画開発をセントリックPLMで管理している。丸紅様では異なるお客様向けに様々なルートやルールでの商品づくりの仕組みがあるが、それをできるだけ標準化していくためにセントリックPLMを採用した。ストリート系ファッションブランドで成長しているyutori様は、3か月という短期間で導入を実現した。導入後は投入する商品の的中率が大幅に向上したと評価されている。オンワード様はサプライヤーを巻き込んだデジタルコラボレーションを進めていくことを推進しており、そのための全社基盤として採用した。
海外の導入事例では、ドイツに本社があるディスカウント食品小売企業のALDI SOUTHは、欧州および他地域でビジネスを展開する中で幅広いPB商品を展開しており、品揃えも多くサプライヤーの数も増え続け、既存システムの限界が見えたことでセントリックPLMの導入を決めた。仕入れ、プランニング、MD、商品企画、ブランディングなどの担当者にサプライヤーも加えて、各国をまたがったコラボレーション基盤として活用している。取り扱うPB商品が劇的に増加していく中で市場投入期間(Time to Market)の短縮を実現し、タイミングを逃さず、いかに良い商品を投入していくか、そしてサステナビリティへの対応や品質向上を含めての効果を狙っている。
米国の家具や室内装飾品を扱うGMSのBig Lotsは、1万4000SKUと商品の数が多く、調達に手間がかかること、属人的なExcelベースの管理をしていたが、それも限界が来たことでシステムを刷新した。セントリックPLMの導入によりすべての部門を一つのリポジトリで管理できることで情報の精度が向上、開発スピードと精度も向上し、サプライヤーとのコラボレーションもスムーズに進めることができるようになった。
英国の食品メーカーWicked Kitchenは、2018年創業とまだ新しい会社。ビーガン食品に特化した商品を製造している。英国Tesco向けに20品目の製品を展開することからスタートして、現在は冷凍食品、アイスクリーム、ミールキット、調味料、インスタントフードなど植物性のビーガン食品を開発し販売している。英国で成功し米国進出を計画したが、米国の規制要件や認証への対応で苦労した。情報はあるが製品に紐づけられるかたちでデータが存在していなかったという。社内のサーバーやクラウド上に必要なデータが「捨てられていた」と同社では表現しており、それらの情報を生かすためにセントリックPLMを導入してデータを集中管理し、どのような素材がどの製品に使われているのか、すべての情報を一元管理できるようになった。製品パッケージに記載するラベルの管理などを含め、幅広くCentricを活用している。