消費者が決める廉価の基準
他社より安いことは1つの価格評価になる。しかし本質は、消費者が安いと思うかどうかである。お客が商品購入の際にその都度、1品目ずつ、数店の価格を比較して購入するわけではないため、「廉価だ」というストア・イメージを持ってくれれば安い店という高評価が得られる。
一方で、競争相手の価格を調べ、すべての品目で、その下をくぐる低価格に値入れしたとしても、廉価なイメージが浸透するとは限らない。
競争の激しいアメリカのスーパーマーケット(SM)の店頭で、近所のウォルマート(Walmart)との価格比較表を見かけることがある。時には、ウォルマートと自社での30品目前後の実際の購入商品を、それぞれの買物カートに乗せて2台並べ、実物で臨場感あふれる主張をする店もある。1品目単位でなく、合計金額において、ウォルマートよりわが社のほうが〇ドルも安いと、お客にアピールするのだ。
価格比較データは業界誌に掲載される機会も多い。それらを見てもわかることだが、安さについては誰もがウォルマートを高く評価している。しかし必ずしもすべての品目が安いわけではない。先のSMがウォルマートより安いと主張できるのは、自社のほうが安い品目だけを選んでいるからである。
選んだ品目をよくよく見ると、購買頻度があまり高くない、販売数量が少ない品目も選ばれている。それらはウォルマートが重視していない品目なのだ。
すべての品目を最低価格にすることはできない。したいのはやまやまだがそれをすれば営業利益の確保が難しくなり、企業は存続できないからである。
“安さ”とは、お客が店に対して廉価イメージを持ってくれることである。企業側はそう仕向けることが重要である。
近年、女性の有職率は75%に高まり、単身世帯は増加の一方である。みんな仕事と暮らしの維持を両立させねばならない。したがって各社の特売チラシを横に並べて価格を比較して、品目ごとに購入店舗を決めて買いまわるという、昭和の時代の専業主婦のような時間のかかる買物行動はできない。日常の買物は安いイメージのある店で必要な品のすべてを短時間で手に入れる“ショートタイムショッピング”が求められるのである。
なお、お客が安いと思う要因は、用途に応じた“常識価格” 、言い換えるとお客の予想を大幅に下回る場合である。大幅とは3割と7割が目安となる。3割は仕入れの合理化またはローカルブランドかストアブランド開発で実現する。7割は品質変更を伴うプライベートブランド(PB)商品の開発で可能となる。
もう1つの要因はその安さが売場で目立つことである。お客が意識して探さなくても、通路を通る際に自然に目に飛び込んでくる状態にするのだ。これには特別なプレゼンテーション技術を用いることになる。
廉価の仕組みは売れ筋品目の追求から
流通業にとって低価格化は“永遠の命題”である。常に新しい挑戦課題として取り組み、それに終わりはない。自然に安く売れるような仕組みを構築することがわれわれの使命である。
そのためには他社に負けない
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