セブン&アイ、激化するアクティビストとの対立 求められるのは「人」選ではなく「事業案」選

2023/05/01 05:55
アナリスト:椎名 則夫
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「一部の取締役」の問題なのか?

セブン&アイのロゴ
2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon

しかし、バリューアクトの今回の株主提案にも首を傾げてしまいます。

最も解せないのは、会社が提案する再任予定の取締役10名に対してバリューアクトも賛同している点です。

仮にバリューアクトの主張通り、井阪社長以下数名の取締役の専横によって経営があるべき姿になることを阻害しているのが事実であれば、直接的な阻害要因を除くことはもちろんですが、そうした体制を許容してきた体制、すなわち全ての取締役に連帯責任があるはずでしょう。

筆者がバリューアクトの立場であれば全取締役を解任し、新たなチームを提案します。

また、会社側が述べるように、バリューアクト側が推薦する新任取締役の適正にも疑問が残ります。グローバル化とデジタル化に挑むセブン&アイのコンビニ事業の将来像を描くに最適なのか、説得材料がさらに欲しいところです。

加速感乏しい改革に必要なのは
関係者がコミットできる「事業案」

セブン&アイと同様、アクティビストと対立の構図にあった東芝経営陣が、アクティビストが好む体制に刷新されて1年が経過しました。しかし、アクティビストの希望を早急に充足し、経営陣と従業員が一丸となって事業発展に全力を注ぐ体制に移行できたかというと、正直なところ未だ目立った成果は出ていません。

経営トップを入れ替えても、入れ替えた経営陣が本当に適性なのかが判明するまでに時間を要しますし、また新しいトップが企業を導くにはそれなりの期間の助走が必要なのでしょう。

バリューアクトに期待したいのは、改革を減速させる阻害要因を解きほぐす具体的な提案です。今後競争が厳しくなるコンビニ事業の行く末などを見据えると、取締役の「人」選を争うほどの時間的余裕は残されていないと考えます。

筆者がセブン&アイに期待するのは、食をメーンとしたグローバル・フランチャイズになり、たとえば「マクドナルド」のような存在になることです。

そのために何をするべきか、具体案の競い合いを期待したいのです。

経営側の取締役提案内容にも不満が残ります。マクドナルドを凌ぐグローバル・フランチャイズになる本気度を示して欲しいと考えます。そのために、本格的なグローバル人材の育成と登用、および外部からの招聘を期待します。

ちなみに、私見になりますが、ごく最近会社側からスーパーストア事業のIPO(新規株式公開)についての言及が出ています。スーパーストア事業は、潜在的には従来型のコンビニFC事業との競合になる可能性も秘めているわけですが、あえて切り出す姿勢を示すことでスーパーストア事業にコミットする人材と意欲を最大化できるのであれば、親子上場の時期が一定期間生まれることになるかもしれませんが、旧来通りスーパーストア事業を抱え込むよりは良いと考えています。

株主総会が近づき、会社側、バリューアクト側の双方からの情報発信がまだまだ過熱していきそうです。来たる株主総会で、すべての株主がセブンアイの事業ポテンシャルに対して本当の「愛」を示すとき、どのような選択になるでしょうか。

コロナ禍も明けてきましたので、久しぶりに会場が盛り上がる株主総会になりそうです。

 

プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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