10年後10兆円をめざすファーストリテイリングの死角とは?財務と戦略を徹底分析!
あえて問いたい「ファーストリテイリングに死角はないのか?」
それでは、ファーストリテイリングに死角はないのか?
私は、ファーストリテイリングが継続する「より大きく、より高く」という方向に対し、畏敬の念を抱きながらも、あえて苦言を呈したいと思う。
それは、果たして同社が取引するアジアの工場、そして、日本での衣料品の廃棄ゴミはどうなるのか、という疑問から端を発するものだ。ファーストリテイリングは、「2030年までに全使用素材の50%をリサイクル繊維に変える」言っており、それ自体は素晴らしいことである。
だが、以前の論考で述べたように繊維業界の再生繊維というのは、いわゆる「ゴミ」から作ったポリエステルで、その服を捨てれは、ペットボトルを捨てるのと同じであり、こんなことを許していたら、アパレル産業は「ゴミの終着駅」になってしまう。
私は、ペットボトルを作っている飲料メーカにペナルティを課して、繊維産業にアディショナルコスト(ポリエステルを反毛するコストや着心地の悪さのコスト)を負担させる、あるいは、国が車の燃費に対してエコカー減税をかけたように、環境と共存するコストを補助金負担するということをすべきだと思う。例えば大手ブランドで、CO2排出に一石を投じるブランドを立ち上げるも全く泣かず飛ばずの状況であり、今はIRから姿を消しているようなブランドもある。SDGsは、私が最初から言っているように企業にとってチャンスではなくコストなのだ。「Z世代は違う」などというが、先日大阪で講義を行った際、Z世代に環境コストを出してでもサステナブルな服を買うかを尋ねたところ、そんな人はゼロだった。むしろ、安ければShein(シーイン)に列をなすのが今の若い世代なのだ。これは、マーケティングを完全にミスリードしている結果起きている。
これと同じことが「10年で3倍の売上」という方針に滲み出ている気がする。私は若いころ同社の中途採用に応募したことがある。そこで私は「御社のようなリーディングカンパニーこそ、世界の見本たる、ポスト資本主義、ポスト売上至上主義のありようを見せるべきです」と発言して瞬殺され「もう、来なくて良いです」と追い返されたことがあった。
私は、今でもその考えは変わっておらず、例えばだが、これからは売上ではなく、株価が企業のスケールを表す指標となり、財務3票はキャッシュフローが主体になる、つまり、株価とキャッシュフローで我々は初期的にビジネスモデルの健全性を図るような時代が来て、その先陣を切るのが私たちだ、という具合に宣言してもらいたかった。高い売上目標を立てるのは、現段階では世界で高いシェア率を獲得しているとは言い難く、存在感が小さいからだというのが日経新聞の論調だが、もはや人類の経済活動に対して単なるSDGs対応でなく、企業の在り方そのものから未来像を語ってほしかったというのが私の意見である。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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